骨盤臓器脱手術後に行われる尿失禁手術の話 今週の手術は7例

毎日お祭り状態。楽しい場所です・・・

 

おはようございます。

辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科医師の赤木一成です。

 

週末なので、「一週間の骨盤臓器脱手術記録」を書きます。

患者さんを特定できないよう配慮して、数週間前の日常を描写しています。

 

手術を7例行いました。

 

この週は、子宮脱+膀胱瘤の手術を7例行いました。

 

特に何も起こらない、淡々とした一週間でした。

全員予定通りの退院です。

 

骨盤臓器脱術後に尿失禁手術が必要となる可能性はどれくらい?

 

前回に続いて、今回も排尿関連のお話をさせていただきます。

 

骨盤臓器脱手術を行うと、術後に尿失禁(尿もれ)が起こる人がいます。

 

しばらく骨盤底筋体操やっても改善しない場合には、↑尿失禁手術(TOT手術)が必要となります。

 

ということで、

「わたし骨盤臓器脱手術を受けるけど、術後に尿失禁手術(TOT手術)が必要となる可能性はどれくらいなの?」

という疑問が、当然おこりますよね。

 

結論から言いますと、当院では・・・

「3%台(100人中3~4人)」で推移しています。

 

以下、くわしく見てみましょう。

 

 

骨盤臓器脱術後に尿失禁が起こった場合、骨盤底筋体操で、尿失禁が回復してくる方が多数派です。

 

体操する期間は、だいたい3か月が目安ですね。

それで回復しない場合には、尿失禁手術を考える必要がでてきます。

 

じゃあ、この尿失禁手術が必要となる可能性はどれくらいか?

2021年を振り返ってみたところ、ワタクシ1年間で10例のTOT手術を行っていました。

そして、この年に手がけた骨盤臓器脱手術は268例だったので・・・

「骨盤臓器脱術後に、追加の尿失禁手術が必要となる確率」は、だいたい3%台くらいと考えたらいいと思います。

(骨盤臓器脱手術とTOT手術を行う時期にはタイムラグがあるので、この値は大体の目安ですけどね)

 

どんな人に尿失禁が起こりやすい?

 

これは私の経験なんですけど、術後に尿失禁が起こりやすい人って・・・

①重度の骨盤臓器脱の人

②肥満の人

このいずれか(または両方)に多い印象があります。

 

重度の骨盤臓器脱の人は、尿道が相応のダメージを受けているから、締まりが弱くなっているんでしょうね。

また肥満の人は、腹圧が高いから、尿失禁が起こりやすくなってるんでしょう。

 

だから、

骨盤臓器脱手術は重症化する前に受けましょう

肥満の人は手術までの待ち期間にダイエットしましょう

というのは、こんな理由もあるわけですね。

 

骨盤臓器脱手術と同時に、尿失禁手術はできないの?

一部の病院では、術後に尿失禁が起こらないように、骨盤臓器脱手術と尿失禁手術(TOT手術)を同時に行っているところもあります。

 

「骨盤臓器脱術後に尿失禁が起こりそうな人」を、あらかじめ検査で見当つけて、同時にTOT手術を行っておくやり方です。

 

これを、「予防的尿失禁手術」といいます(下図)

 

 

この方針の長所は、「骨盤臓器脱手術→尿失禁が生じて後日TOT手術」という二度手間になる人が減る、

という点です。

 

短所は、「骨盤臓器脱術後に尿失禁が起こるかどうか、正確に予測するのは難しい」という点ですね。

 

だから・・・

本来TOT手術が必要なかった人(尿道の締まりがゆるくない人)にTOT手術をやってしまったり、

本来TOT手術が必要だった人(締まりがゆるい人)にTOT手術をやらなかったり、

こんな事態が起こるんです。

 

よってこのへんは、病院によってスタンスはさまざまです。

 

当院では・・・

まず骨盤臓器脱手術のみ行って、膀胱尿道を正常の位置に戻す。

その後の排尿状態に応じて、必要な処置を追加する。

という方針を採用しています。

 

これなら、正確に排尿状態を評価して、必要な人だけにTOT手術を行うことができるからですね。

 

赤木一成 辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科