おはようございます。
辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科医師の、赤木一成です。
新年度早々、手頃なネタが無かったので・・・
今回は小ネタを行かせていただきます。
よろしければ、お付き合いください。
散々こき使ってきた手術器具セット
↑これは、骨盤臓器脱経腟手術で使用する器具セットです。
同じセットを3つ用意して、ローテーションで使い回しています。
これまで、ワタクシだけで2300件以上、他の医師も含めると3000件近い登場機会がありました。
このセット、約20種類の器具で構成されています。
この中で、もっとも登場頻度が高い(=こき使ってきたw)器具は、二つあります。
こき使ってきた器具その①:アリス鉗子
↑まず、手術の最初から最後までずーっと働いている器具が、これです。
アリス鉗子といいまして、膣壁を把持して(つかんで)牽引するのに用います。
先端の歯のところが優しい形状になってて、柄のところも程良く「しなる」構造だから・・・
組織にダメージ与えず優しくつかめるので、膣壁とか腸管とかを把持するときの必須アイテムです。
こき使ってきた器具その②:クーパー剪刀
そしてもうひとつ。
↑これはクーパー剪刀といいまして、要は「先が丸まってるハサミ」です。
これを用いて、剥離(はがすこと)とか切離(切ること)みたいな操作を行います。
このクーパー、奥が深いアイテムです。
ハサミみたいに「チョキン」と切るだけじゃないんです。
先端を少し開いた状態で組織を押し切るとか、軟部組織を削ぎ落とすとか、先端を押し広げて分離するとか、自由自在に駆使できる必要があります。
で、骨盤臓器脱手術では・・・
操作の半分近くを、この剥離と切離が占めます。
↑アリスで組織を引っ張って、クーパーではがしたり切ったりするわけですね。
かくして、この二つの器具が、もっともこき使われることになります。
日本一こき使われた手術器具かも?
アリス鉗子もクーパー剪刀も、散々こき使ってたら(笑)、だんだんヘタってきます。
アリス鉗子は、組織をつかんで引っ張った時に、把持力が弱ってつるんと外れるようになります。
クーパー剪刀は、組織を切る時に、切れ味が悪くなります。
ヘタってきたらどうするか。
クーパー剪刀は、切れ味が悪くなったら、「研ぎ直し」してもらうことで復活可能です。
いっぽうアリス鉗子は、把持力が衰えたらもう復活できないので・・・
とことん使い倒して(笑)、新品に買い替えることになります。
と、いうことで。
われわれ手術中に、↑アリス鉗子がヘタって外れやすくなってたら・・・
「このアリス、日本一こき使われたんじゃね?」
「元を取りまくったよね」
「かわいそうなアリス」
「いやいや存分に働いたから、思い残すことはなかろう」
みたいな、しょーもない会話してます(笑)
以下、余談です
以下、余談です。
ワタクシ医師になって、最初に覚えた手術器具の名前が、このアリスとクーパーなんです。
なんでかといいますと・・・
そう。↑このお方のおかげです(笑)
大変失礼しました・・・
赤木一成
辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科