骨盤臓器脱手術を安全確実に行うために:術中確認作業のおはなし

念願かなって4年ぶりに行けたんです・・・(喜)

 

おはようございます。

辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科医師の、赤木一成です。

 

今回は、骨盤臓器脱手術中におこなう「確認作業」のお話をいたします。

よろしければ、お付き合いください。

 

確認作業①:臓器損傷が起こってないかチェック

 

直腸指診

 

一つ目の確認作業は、「直腸指診」です。

 

 

手術の序盤に、「剥離(はくり:はがす作業のこと)」を進めてゆき、靭帯(仙棘靭帯)に到達するステップがあります。

 

 

靭帯に到達したら、そこに糸を通します。

これを「穿刺(せんし)」といいます。

 

この「剥離」と「穿刺」って、直腸の近くで行われる作業です。

 

だからこれらの作業が終わったら、↑直腸指診を行って、直腸が損傷してないかチェックします。

おしりから指を入れて、直腸を慎重に触っていくわけですね。

 

尿の色チェック

手術の中盤に、膀胱を剥離し、さらに縫い縮める作業があります。

 

この膀胱の作業を行う途中に、ときどき尿の色をチェックしています。

もし膀胱損傷が起こってたりとか、膀胱内に糸が露出してる場合には、膀胱に血液が混入してくるわけですね。

 

膀胱鏡検査

前述した膀胱の作業がすべて完了したら、続けて↑膀胱鏡検査を行います。

カメラで膀胱内をくわしく見ていくわけですね。

 

この時に確認していることは三つです。

  • 膀胱が損傷してないこと
  • 糸が膀胱内に露出してないこと
  • 腫瘍性病変(膀胱がん)が無いこと

 

じっさい、臓器損傷ってよくあることなの?

 

「じっさい、臓器損傷ってよくあることなの?」

当然、こんな疑問が起こりますよね。

 

 

直近に起こった臓器損傷は、2021年になります。

 

それから現在まで、600例以上にわたって、この合併症は起こっていません。

確率は500分の1以下と思っていただければいいでしょう。

 

確認作業②:支持力は不足してないかチェック

 

穿刺して靭帯に通した糸は、つづいて↑「子宮頸部の筋層」に通して固定します。

このとき、糸を強く引っ張ってみて、糸がしっかり筋層に固定されていることを確認します。

 

続いて、この糸を結紮(けっさつ:結ぶこと)することで、子宮が挙上されていきます。

 

 

通常の子宮脱では、この作業が問題となることは無いのですが・・・

 

 

膣脱(子宮が無い人の骨盤臓器脱)では、「子宮頸部の筋層」が無いので・・・

糸を固定する組織が弱いことがあるんですよね。

この場合、支持力が不足して、再発の原因になります。

 

このような場合には、特殊な追加処置を施すことで、支持力の強化を行うようにしています。

 

 

このへんは、散々いろんな経験してきた結果、確立された技術の一つです。

まあ、「餅は餅屋」ということにしときましょうか(笑)

 

 

赤木一成

辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科