昔から行われてきた骨盤臓器脱の手術(従来法)には、多くの種類がある。

前膣壁形成術
後膣壁形成術
Manchester手術
経腟子宮全摘術
仙棘靭帯固定術
膣閉鎖術・・・

これらは、子宮を固定したり、膣壁を強く縫い縮めて補強する手術。
場合によっては子宮を取ることもある。

これらの術式は、もともと弱った組織を使って修復を行う方法なので、メッシュ(小型の医療用シート)を使う手術と比べるとどうしても再発率が高くなる。

 

メッシュを使うかどうかは、骨盤臓器脱の状態で使い分けるのが最善と考えている。

それほど重度でない骨盤臓器脱であれば、メッシュを使っても使わなくても成績に差はないので、メッシュを使わずに手術している。

いっぽう大きく脱出する重度の骨盤臓器脱や、従来法で再発した骨盤臓器脱などでは、メッシュを使ったTVM手術を行う方針としている。

メッシュは「メッシュを使った方が明らかに有利」な状況のときに限って「必要最小限」に使用するということ。

 

メッシュを使わない骨盤臓器脱の手術(従来法)が行われる状況

(1)あまり大きく脱出しない骨盤臓器脱

このような場合には、メッシュを使っても使わなくても再発する可能性は低く、成績にあまり差がないことがわかっているので、わざわざメッシュを使う必要はない。

このような場合には従来法の手術を行っている。

 

(2)全身の抵抗力が弱っていると考えられる方

重度の糖尿病の方や、免疫抑制剤を使用している方では、全身の抵抗力が落ちていることになる。

TVM手術は体内に異物(メッシュ)を留置する手術なので、このような場合には行わない方がよいとされている。

 

メッシュを使う骨盤臓器脱の手術(TVM手術)が行われる状況

明らかに大きく脱出する骨盤臓器脱(膀胱瘤や子宮脱)や、「従来法」で再発した骨盤臓器脱では、メッシュを使うことで確実に治すことができるため、このような場合にはTVM手術を選択している。

 

解説

昔から行われてきた従来の骨盤臓器脱の手術(従来法)には、色々なものがあります。

この「従来法」の中で代表的な手術は、「膣側から子宮を摘出し、膣壁を縫い縮めて補強する方法」です。

この術式は一世紀近くにわたって世界中で行われてきた、実績のある方法です。

「従来法」と「TVM手術」のどちらを選択すべきか?

「ほとんどすべてTVM手術で行っている」という施設もあるし、逆に「メッシュは使わずに従来法のみ行っている」という方針の施設もありまして、施設によって意見が異なっているのが現状です。

われわれの施設では、「メッシュを使った方が明らかに成績が良いと思われる場合には、メッシュを必要最小限に使用する」という方針としています。

たとえば明らかに大きく脱出する骨盤臓器脱(膀胱瘤や子宮脱)では、メッシュを使った方が明らかに成績が良いので、このような場合には確実に治せるTVM手術を選択しています。

さらに「従来法」の手術を行って再発した場合にも、TVM手術を使えばまず確実に治すことが可能です。

一方、それほど重症でない骨盤臓器脱では、メッシュを使っても使わなくても再発は少ないことが分かっているので、このような場合にはメッシュを使わず「従来法」で手術を行っています。

また重度の糖尿病で免疫力が落ちているような方などでは、異物であるメッシュを留置すると感染を起こしやすいと考えられているため、このような場合にも「従来法」を行う方針としています(実際にはメッシュが感染したことはいままで1例もないのですが)