骨盤臓器脱(子宮脱)& 女性肛門科 千葉県松戸市

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子宮脱/膀胱瘤

膣閉鎖術:今は行われなくなった骨盤臓器脱の術式

 

骨盤臓器脱外科医師の赤木一成です。

 

毎日のように子宮脱や膀胱瘤の手術を行っておりますが、患者さんのなかには90歳近い高齢の方がいらっしゃいます。

このようなケースに、ときどき行われる術式として、膣閉鎖術があります。

もっとも侵襲(ダメージ)の小さい術式とされているんですね。

 

膣閉鎖術って、要は「膣を縫い閉じてしまう」術式です

↑これが、骨盤臓器脱でもっとも多いタイプの、「子宮脱+膀胱瘤」です。

 

↑これが、膣閉鎖術の完成図です。

前後膣壁の膣粘膜をはがして、はがした場所を縫い合わせ、膣の穴を縫い閉じる方法です。

 

見た目は単純明快で、短時間でできそうな手術に見えるけど・・・

粘膜をはがす層とか、はがす範囲とか、縫い合わせる手順とか、いろいろ注意事項があります。

そしてけっこう手間がかかるし、一定頻度で再発もあります。

 

膣閉鎖術って時々再発する。再発2つのパターン

膣閉鎖術後って、(私の知る範囲では)けっこう再発があります。

初期には私も膣閉鎖術やってたんですけど、後述する理由により、間もなくやらなくなりました。

 

再発したら、再手術が必要です。

他院で膣閉鎖術をやって再発して、紹介されてくるケース、ときどきあります。

 

この「膣閉鎖術後の再発」って、2つのパターンがあります。

 

手前もっこり型

 

まず、縫い合わせた場所の手前側から、膀胱瘤と直腸瘤が出てくる再発パターンです。

「手前もっこり型」とでも言いましょうか。

 

このパターンの再発って、紹介状が特徴的です。

膣閉鎖術した病院から紹介状が来た場合、文面には「再発はしてませんが云々・・・」と書かれてたりするんですよね。

 

 

まあたしかに「子宮脱は」、奥に引っ込んでて再発してないんだけど・・・

膀胱瘤と直腸瘤は脱出してるんだから、やっぱり患者さんは「再発した」と思いますよねえ。

 

全部はがれた型

 

もう一つの再発パターンは・・・

↑縫ったところが全部はがれて、完全にもとの「子宮脱+膀胱瘤」の状態に戻ってる再発です。

 

こちらはまあ、誰が見ても明らかな「再発」であります。

 

膣閉鎖術後再発の手術はちょっと特殊

 

この「膣閉鎖術後の再発症例(手前もっこり型)」って、ちょっと特殊なところがあるけど、手術方法は決まっています。

 

まず、↑膣閉鎖術で縫い合わされた場所をはがしていきます。

近くに膀胱や直腸があるので、臓器を損傷しないよう、慎重に操作を進めるのがポイントです。

 

 

↑はがし終わったところです。

これで、通常の「子宮脱+膀胱瘤」の状態に戻りました。

 

 

あとは、↑いつもやってる「子宮脱+膀胱瘤」の手術と同じです。

 

膣閉鎖術をやらなくなった理由いろいろ

 

この膣閉鎖術、当院ではすでに淘汰され、近年ずっと行われていません。

 

  • 手術時間も侵襲(ダメージ)も、当院でいつも行ってる術式と大差ないと感じたこと。
  • 他の経腟手術より再発しやすいこと。
  • 膣を縫い閉じてしまうことに疑問を感じたこと。

このあたりが理由です。

 

(注)これはあくまでも当院限定の話です。

膣閉鎖術に熟達して好成績をあげてる施設もあるかもしれませんからね。

 

膣を縫い閉じていいんだろうか?という疑問

わたくし外科出身なので、乳がんの手術患者さんを、過去に数多く担当してきました。

そこで思ったのは、「やっぱり女性のアイデンティティである乳房が変形するのは、女性には受け入れがたいんだろうな」ということなんです。

 

それと同じで、「膣閉鎖術で、女性のアイデンティティである膣を縫い閉じてしまって、女性は受け入れられるんだろうか?」

こんな風に思ってしまったんですね。

 

「これだったら、自分がいつもやってる術式のほうがいいかな。麻酔法も同じだし、手術時間も変わらないし、膣の形も保てるんだから。」と思って、膣閉鎖術をやらなくなった経緯があります。

(あくまでも私の考えです。膣閉鎖術を愛用している先生がいらっしゃればごめんなさい)

 

こんな条件を満たすなら、また膣閉鎖術をやってもいいかも

もし私が、これから膣閉鎖術をレパートリーに入れるのであれば・・・

  • 局所麻酔でできて(全身麻酔や脊椎麻酔が不要)
  • 今の子宮脱手術よりずっと短時間でできて(せいぜい30分)
  • 再発も無く
  • 膣がふさがっても患者さんが不満を抱かない

こういった条件を満たす必要があると考えます。

 

これなら、いま私がやっている手術より低侵襲です。

超高齢者とかにうってつけなので、私もこの膣閉鎖術に前向きになるんでしょうね。

 

「何を言うか、俺の膣閉鎖術はそんな感じでできるぞ!」という先生はいらっしゃいませんか?

一度教えを請いたいと思います・・・

 

赤木一成 骨盤臓器脱外科医師

 

 

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