あめましておめでとうございます。2021年の手術成績を公開します。

 

あけましておめでとうございます。

辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科医師の赤木一成です。

 

2022年になりました。

今年も骨盤臓器脱手術を待ってる方がたくさんいらっしゃるので、できるだけ多くの方に、最善の手術を提供していきたいと思います。

 

2021年の骨盤臓器脱手術成績:268例を検証してみた。

 

2021年の、骨盤臓器脱(子宮脱・膀胱瘤・直腸瘤・膣脱)の手術実績を公開します。

(直腸脱に関しては、いずれ折を見て公開しようと思います。超高齢者とか施設入居者とか遠方在住の比率が高く、退院後になかなか通院できない人が多くて、評価が難しいんです・・・)

 

2021年に、私が手がけた骨盤臓器脱の経腟手術は、268例ありました。

(直腸脱経肛門手術は47例でした)

 

2020年の実績が220例で、過去最高を更新したと思ってたら、2021年はさらに大幅増でした。

 

毎年右肩上がりで推移してきましたが、そろそろ上限ではないかと(笑)

私も手いっぱいだし、手術室の枠も限界に近づいてます・・・

 

コロナに対しては、素晴らしい対応ができていたと思います。

当院感染症チームの健闘により、院内クラスター発生を起こすことなく、1年通して通常通りの業務を行う事が出来ました。

患者さんやご家族にもご協力いただき、まことにありがとうございました。

 

メッシュを使う比率は・・・

 

私は経腟手術(膣側から行う手術)に徹しています。
メッシュを使わない手術メッシュを使う手術マンチェスター手術

経腹手術(おなか側から行う手術)は、他のドクターが担当しています。
腹腔鏡下仙骨膣固定手術

 

2021年に、私が術者を担当した経腟手術が、268例ありました。

このうち、メッシュ手術(TVM手術)を4例に行っていました。

いずれも、過去数年間のあいだに手術を受けて、その後再発したケースに対して行ったものです(後述)

 

残り264例には、メッシュを使わない方法(メッシュを使わない手術マンチェスター手術)で、手術を行っておりました。

 

2020年のメッシュ手術は0件だったんですけど、2021年はたまたまメッシュが必要なケースが続きましたね。

 

約99%の人が、だいたい予定通りに退院できていた。

 

入院期間が大幅延長となった大きいトラブルが、約3年ぶりに、1例発生しました

他には手術関連の大きいトラブルはありませんでした。

 

術後の排尿トラブル(尿が出にくい・残尿が多い)で、入院期間が数日延長となった方が、3名ほどいらっしゃいました。

いずれも保存的に対処し、自然回復して退院されました。

 

この「術後の排尿トラブル」って、必ず年に何人か発生します。

このような人って、術前から尿の出が弱かったり、もともと「尿が出にくくなる薬」(精神神経系の薬、腸管の蠕動をおさえる薬、過活動膀胱の薬 etc…)を飲んでいる印象があります。

 

この状態に、さらに手術の刺激が加わるから、排尿トラブルが生じるわけです。

だから、たぶんこの合併症は、将来的にもゼロにはならないだろうと思ってます。

 

以上、268名のうち264名の方は、だいたい予定通りに退院できていました。

率としては98.5%になりますね。四捨五入して99%ということで(笑)

 

ちなみに「まだ排便排尿が落ち着かない」とか「痛みがまだ気になる」とかで、退院が1~2日ほど延長となった方は、「だいたい予定通り」に含めています。

 

再発は今のところ2例。

2021年に手術した268例のうち、再発して再手術を行ったのは、いまのところ2例です。

 

 

再発したのはいずれも、「子宮脱+直腸脱」で手術を行ったケースです。

 

 

この「子宮脱+直腸脱」のケースは、骨盤底筋が薄く弱くなってて、骨盤臓器(子宮・膀胱・直腸)を支えられなくなっているんです(上図右)

頑張って手術するんですけど、膀胱瘤が出てきたり、直腸脱が再発したりと、苦戦することがあります。

 

ということで、いまのところ、再発して再手術を行った方は2名です。

まだ術後1年経ってないので、これからもぽつぽつと、再発する人が出てくるかもしれません。

 

追記:現在のやり方に落ち着いてからの(2019年秋~)通算成績を集計してみた

 

現在のやり方(=原則メッシュ使わずに治す)に落ち着いたのは2019年秋で、それから今まで約600例の骨盤臓器脱手術を行ってきました。

この「現在のやり方」の通算成績を集計してみました。

 

大雑把な数字となりますが、おおまかな傾向は把握していただけると思います。

 

メッシュ手術を行った比率は・・・

私が担当した経腟手術・約600例の手術症例のうち、メッシュを使ったケースは7例です。

約99%の方は、メッシュを使わずに治せているということです。

 

入院期間は・・・

約600例のうち・・・

術後排尿トラブルで入院期間が数日延長となった方が5名。
臓器損傷で入院期間が大幅延長となった方が1名。
手術手技と関係ない心肺系の合併症が1名ありました。

これ以外の約99%の方は、入院期間の大幅延長無く、だいたい予定通りに退院できていました。

 

再発は・・・

約600例のうち、再発で再手術を行ったのは、現時点で4例です。

現時点では、99%以上の方は、一回の手術で治せているということです。

 

将来あと何人か再発が出てくる可能性もあるので、長期的な再発率はもう少し高くなるかもしれません。

2%程度に落ち着くんじゃないかなーと期待してますが、これはあと数年たたないと分かりませんね・・・

 

(参考)子宮脱や直腸脱の手術:再発可能性はどれくらい?

 

今年もよろしくお願い申し上げます。

 

以上、2021年の骨盤臓器脱手術成績でした。

ほぼ間違いのない数字だと思うのですが、もし間違いがあれば、この記事を読んだスタッフが指摘してくれると思うので修正します。

 

今年もよろしくお願い申し上げます。

 

赤木一成 辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科