骨盤臓器脱手術で使われる靭帯のお話(今回はマニアックです・・・)

 

おはようございます。

辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科の赤木一成です。

 

今日はちょっと趣向を変えて、マニアックなお話をさせていただきます。

手頃なネタを思いつかなかったという事情もありまして・・・

 

もしよろしければ、お付き合いください。

 

骨盤臓器脱手術で用いられる重要な靭帯:仙棘靭帯(せんきょくじんたい)

これは、女性の骨盤のイラストです。

ここに仙棘靭帯(赤矢印)という靭帯があります。

 

この仙棘靭帯、とっても太くて丈夫です。

「アキレス腱」はみなさんご存じだと思いますが、これと同じような感じです。

 

子宮脱や膀胱瘤の手術では、この靭帯をうまく利用します。

子宮や膣の近くにあって、しかも丈夫だから、骨盤臓器脱の手術にうってつけなんです。

 

この靭帯に糸をくくりつけたり、メッシュのアームを通したりして、脱出している子宮を吊り上げるんです。

 

靭帯に糸やメッシュを正確に通すのは難しい。

 

この靭帯、長さが5㎝くらいなんですけど、利用できる場所は限られています。

 

たとえば横方向(赤い丸)には太い血管があって、出血する可能性があります。

正中方向(青い丸)には直腸があって、直腸を圧迫したり、最悪直腸を損傷してしまいます。

奥方向(ピンクの領域)には神経や血管があって、これを損傷する恐れがあります。

手前方向(緑の領域)は仙棘靭帯より弱いから、ここに糸やメッシュアームを通しても、再発してしまいます。

 

 

だから正しい場所(黒丸)に、正確に糸やメッシュアームを通す技術が要求されるんです。

 

この靭帯は深い場所にあるので、直接見ながら操作するのは困難です。

(やろうと思えばできますが、傷を相当大きく広げる必要があるので、大きなダメージを与えてしまいます)

だから通常は、最小限の傷で、指先の感覚だけを頼りに行います。

 

指先の感覚で、仙棘靭帯の構造を認識して、正確に糸やメッシュアームを通します。

だから「見よう見まね」で習得するのは不可能で、相当な修練を要します。

 

今回はちょっとマニアックすぎましたね。

失礼しました・・・

 

赤木一成 辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科