骨盤臓器脱手術で必ずメッシュを使うの? 今週の手術は7例

手術室です。私のメインの職場・・・

 

おはようございます。

辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科医師の赤木一成です。

 

週末なので、「一週間の骨盤臓器脱手術記録」を書きます。

患者さんを特定できないよう配慮して、数週間前の日常を描写しています。

 

子宮脱膀胱瘤の手術を7例行いました。

この週は、子宮脱+膀胱瘤の手術を7例行いました。

みなさん特に問題なく経過して、ほぼ予定通りに退院されました。

 

最近ここは同じようなことばっかり書いてますが、これって平和な日々が続いている証拠なので、ご容赦くださいませ・・・

 

骨盤臓器脱(子宮脱・膀胱瘤・直腸瘤・膣脱)の手術では必ずメッシュを使うの?

前回に引き続いて、今回もメッシュのお話です。

 

↑これって、患者さんからよくいただく質問の一つです。

 

画像引用:河野製作所

 

↑メッシュって、プラスチック繊維を編み込んで作ったシートの事です。

メッシュって異物ですから、やっぱり体に埋め込むとなったら気になりますよね。

 

現在当院で「メッシュを使う手術」が選択されるのは、全体の3~4%程度

結論から言いますと・・・

現在当院の骨盤臓器脱手術(子宮脱・膀胱瘤・直腸瘤・膣脱)で、「メッシュを使う手術」が選択される割合は、3~4%程度です。

残りの大半の方は、メッシュを使わずに治すことができています。

 

現在当院では、骨盤臓器脱の新患は、すべて私が担当しています。

そして当院(私)の判断基準に基づいて、患者さんに最適な術式を提案しています。

 

最近の数字を調べてみました・・・

さいきん私が担当した新患のうち、「手術希望となった人」の振り分けを、ざっと調べてみました。

約100名を調べてみたので(時間切れでこれ以上は無理でした・・・)、結果を下の表に示します。

今回はこんな感じの結果が出ましたが、時期によってこの数値は多少変わるでしょう。

 

 

↑これは、当院で行われている4種類の術式の、長所短所を示した表です。

 

表の一番下に、「それぞれの術式が、どれくらいの割合で選択されていたか」を示しました。

(それぞれの術式詳細と、その長所短所については、こちらで詳しく解説しています)

 

どうやって術式決定しているか?

ワタクシはまず初診時に、「性生活を重視するか否か」を判断基準としています。

(この判断基準は、医師によりさまざまです)

 

大半の受診者は、60代後半~80代ですから、ほとんどの方は性生活を卒業しています。

当院の骨盤臓器脱外来受診者のなかで、性生活を重視する若い人は、100人中5人くらいです(全体の5%)

 

性生活を重視する若い人

 

若い人では、↑子宮頸部延長型の子宮脱が多く、この場合マンチェスター手術をお勧めしています。

 

いっぽう↑膀胱瘤メインの骨盤臓器脱は、マンチェスター手術での対応が難しいので、腹腔鏡下仙骨膣固定術をお勧めしています。

 

「性生活を重視する人(全体の5%)」の中で、マンチェスター手術と腹腔鏡手術を選択する割合は、だいたい同じくらいですね。

どちらも2~3%ということにしておきましょう。

 

性生活を重視しない人

 

骨盤臓器脱の手術希望者が100人いたとしたら、うち95人(95%)は、性生活を重視しない方です。

 

このようなケースでは、まず「メッシュ無し経腟手術」を選択しています。

「重症の骨盤臓器脱は腹腔鏡手術」という方針の病院もありますが、当院では重症度は考慮していません。どれだけ重症でも、この方針でほぼ再発なく治せているためです。

 

そしてこの「メッシュ無し経腟手術」で対応できないケースのみ、TVM手術を行っています。

げんざい当院でTVM手術が選択されるのは、100人中1人くらいですね。ここでは1%にしときましょう。

 

ということで、腹腔鏡手術(2~3%)とTVM手術(1%)を合わせたら、「メッシュを使う手術」の対象となるのは、全体の3~4%程度ということになります。

 

メッシュは使っても使わなくても成績は良好。でも使わずに済むならそれに越したことはない

「メッシュを使うか使わないか」

これは施設によって、方針がまったく異なっています。

ほぼ全員にメッシュを使っている施設もあるし、

メッシュを全く使わない方針の施設もあるんですね。

 

現在の私は、「原則メッシュを使わずに治す。メッシュを使わないと再発しそうなケースに限り、メッシュを最小限に使う」というスタンスです。

 

ワタクシが骨盤臓器脱手術に参入した2010年頃は、メッシュ手術(TVM手術)をメインで行っており、それで良好な成績を上げることができていました。

メッシュのトラブルといっても、メッシュ露出が2%くらいに生じる程度で、とくに困るようなことはなかったんです。

 

それから10年にわたって技術改良を続けた結果、今ではメッシュを使わなくてもほぼ再発せず、メッシュ手術と同等(またはそれ以上)の成績があげられるようになっています。

 

ぶっちゃけ「ワタクシ的にはメッシュは使っても使わなくてもいいんだけど、使わずに治せるならそれに越したことはないよね」という感じです。

 

赤木一成 辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科