いつも骨盤臓器脱ばかりなので、たまには痔核の話。今週の手術は8例

8階エレベーターホール。高級ホテルっぽい・・・

 

おはようございます。

辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科医師の赤木一成です。

 

週末なので、「一週間の骨盤臓器脱手術記録」を書きます。

患者さんを特定できないよう配慮して、数週間前の日常を描写しています。

 

子宮脱膀胱瘤の手術を7例行いました。

この週は、子宮脱+膀胱瘤の手術を7例行いました。

 

一人だけ、手術翌日に少量の出血がありましたが、ベッドサイドで簡単な処置を行ってOKでした。

 

みなさん大きなトラブルは無く、だいたい予定通りに退院されました。

平和がなによりですねえ(笑)

 

痔核の手術を1例行いました。

 

またこの週は、痔核の手術を1例行いました。

過去に骨盤臓器脱手術を行った方なんですけど、今度は「痔核が気になるようになってきた」とのことで、痔核手術を希望されました。

 

最近ワタクシ、痔核手術は骨盤臓器脱手術と同時にやることが大半です。

痔核手術を単独でやることは、あんまり無いんですけど、せっかくのご指名なのでやらせていただきました。

この痔核根治手術、ワタクシこれまで3000件くらい経験しています(一応、証拠です・・・)

術後は特に問題なく経過し、予定通り退院されました。

 

たまには痔核の話でも・・・

いつも骨盤臓器脱手術の話ばっかりなので、たまには痔核の話でも。

よろしければ、お付き合いください。

 

 

↑骨盤臓器脱にしばしば合併する直腸肛門疾患がありまして、その代表が直腸脱と痔核です。

 

そして今回するのは、この痔核の話です。

 

 

↑これが、直腸肛門のイラストです。

左側が断面図、右側が正面から肛門を見た図です。

 

肛門と直腸の間に、歯状線(しじょうせん)という境界線があります。

痔核手術では、この歯状線が大事なポイントになるんです。

 

 

↑歯状線より奥だけ出てくるのが「内痔核」、手前側だけ出てくるのが「外痔核」と言います。

そして内痔核と外痔核が一体となって下がってくるのが、「内外痔核」です。

 

 

↑痔核でもっとも頻度が高いのが、「内外痔核」です。

「内外痔核」では、内痔核と外痔核と一緒に、歯状線も下がってきます。

 

長年行われてきた痔核手術のやり方

 

↑通常の痔核根治手術では、この歯状線を越えて内痔核まで切り込んで、痔核の一番上(痔核上極といいます)まで切り進めなければいけません。

痔核上極に到達したら、内痔核には太い血管がつながっているので、これを糸で結びます(結紮〔けっさつ〕といいます)

 

 

↑それから痔核を切除します。

血管は結紮されているので、この時に出血することはありません。

 

そして傷口を縫合して完了です。

 

痔核手術における最大の課題

 

でもこの結紮切除術、ときどき大きなトラブルが起こります。

それが「術後晩期出血」です。

 

結紮や縫合で用いる糸は「溶ける糸」なので、術後しばらくしたら自然に消失します。

このとき傷の治癒が十分進んでない場合、ここに便の刺激が加わると、出血することがあるんです。

 

これを「術後晩期出血」といいます。術後1週間~10日くらいが、この術後晩期出血の生じやすい時期です。

 

画期的な治療法が登場

 

内痔核には太い血管がつながっているので、これに切り込むと術後晩期出血が起こりえます。

いっぽう外痔核には細い血管しかないので、切ってもほぼ出血しません。

 

術後晩期出血を防ぐには、内痔核に切り込まなければいいということになりますが、外痔核だけ切除しても痔核は治りません。

 

内痔核まで切り込まずに、内外痔核を治す方法はないか?

そこで登場したのが、「ジオン」という注射薬です。

 

 

このジオンって、内痔核に限定して用いる注射薬です。

 

外痔核に打っても効果が無いし、逆に大きく腫れることがあります。

 

まず内痔核にこのジオンを注射すると、内痔核が硬化して消失します。

そして残った外痔核にはジオンが使えないので、ここだけ小さく切除します。ここは切除しても出血の恐れはほぼありません。

 

内痔核はジオン、外痔核は切除。

両者の長所を組み合わせて、内外痔核を攻略するわけです。

 

この組み合わせ法、大腸肛門外科医を長年悩ませてきた術後晩期出血に対して、画期的な効果をあらわしました。

 

究極を目指して全国の専門施設がしのぎを削る

 

でも画期的だったこのやり方も、まだ課題が残っていました。

 

内痔核は注射(ジオン)で対処するんですけど、やっぱり注射だと、切除より効果は劣るんですね。

↑数%の確率で、術後しばらくして内痔核が再発してくることがあるんです。

まだ工夫の余地があるということです。

 

・・・ということで、ここからはエキスパートの領域です。

術後晩期出血を限りなく0にしつつ、かつ内痔核再発も限りなく0にする。

 

この二つを究極の高レベルで両立すべく、いろんな工夫が施されてきました。

マニアックになりすぎるからここでは触れませんが、どこの大腸肛門科専門病院でも確立したノウハウがあり、専門病院にふさわしい好成績をあげることができています。

 

「餅は餅屋」ということですね。

 

赤木一成 辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科