骨盤臓器脱手術で最重要の操作・剥離(はくり)について。

おはようございます。

辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科の赤木一成です。

 

手術でいちばん重要な操作のひとつに、「剥離(はくり)」というものがあります。

これって要は「はがす」ことです。

臓器はすべて、ゆるくくっついているので、それを正しい層で剥がしていく必要があるんですよね。

 

この剥離を行うとき、正しい層を見つけるのが、最重要のカギになります。

あらゆる手術には、それぞれの正しい層があって、それは見れば分かります。

手術の上手な外科医は、確実に正しい層に入る術を心得ています。

だからスルスル剥離が進んで、出血も少なくて、安全なんです。

 

最初に間違った層に入ってしまうと、はがれにくいし、出血するし、最悪臓器を損傷するしで、ロクなことありません。

 

直腸脱手術(デロルメ法)の剥離

たとえば直腸脱手術でよく行われるデロルメ法について。

この手術、筋層と粘膜の間にある層を、正確に剥離していく必要があります。

間違った層に入ってしまうと、筋層に穴をあけてしまったり、粘膜がボロボロになってしまいます。

 

痔核根治術の剥離:クッションを残せ!

つぎは痔核根治術

これは痔核を剥離していくんですけど、単に「痔核と括約筋の間の層」を剥がしていくだけじゃ不十分なんです。

痔核と括約筋の間に、結合組織(われわれは「クッション」と呼んでます)の層があるので、これを「残す」層で剥離しなければなりません。

クッションを「取る」層で剥離してしまうと、剥離層が深くなりすぎて、括約筋がムキムキに露出してしまうんですね。

これだと、瘢痕(傷あとのひきつれ)が大きくなったり、難治創(なかなか治らないこと)の原因になります。

 

前膣壁(膀胱瘤)の剥離は難しい・・・

最後に、膀胱瘤手術における、前膣壁(膀胱瘤)の剥離について。

これは難度が高いです。

図のように、剥離できる層がいくつもあるんですね。

そして私の場合、①メッシュを使わない場合(前膣壁形成術)と②使う場合(TVM手術)で、剥離層を変えています。

 

①②どちらか一方しかやらないんだったら、まだいいんです。

でも①②を両方できるようになるには、上図のすべての層を正しく剥離する技術を、すべて正確に体得する必要があるんです。

容易なことではありません。

 

私も今でこそ、毎日の手術で「正しい層の剥離」を行ってますけど、これって相当修行を積んだんですよ。

 

赤木一成 辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科