おはようございます。
辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科医師の、赤木一成です。
今回は手頃なネタが無かったので・・・
番外編として、「骨盤臓器脱手術:多い手術はなに?時間かかる手術はなに?難しい手術はなに?」というテーマをやらせていただきます。
患者さんが読んでも、特に得るところは無いと思われますが・・・
よろしければ、お付き合いください。
多い手術はなに?
骨盤臓器脱には↑いろんな種類があり、それに応じた術式があります。
この中でもっとも多いのは、もちろん「子宮脱+膀胱瘤」の手術です。
(子宮脱と膀胱瘤は、単独で脱出してくることは希で、たいてい子宮と膀胱が一緒に脱出してきます)
ワタクシが担当する手術のうち、約7割を占めるのがこれです。
これに続いて、膣脱、直腸瘤、直腸脱の手術が、それぞれ1割ずつみたいな感じになります。
(もちろん年によって比率は多少変わるんですけどね)
時間かかる手術はなに?
これはやっぱり・・・
子宮脱(ふつう膀胱瘤も合併する)+直腸脱の手術です。
子宮脱膀胱瘤の手術で約1時間
直腸脱の手術も約1時間
両方合わせて、大体2時間くらいかかります。
ただまあ、時間かかるといってもせいぜい2時間なので・・・
5時間とか10時間とか平気でやってる脳外科心臓外科の先生に怒られちゃいますね(汗)
難しい手術はなに?
これは、「機能を改善させる手術」です。
骨盤底領域の手術は、おおきく以下の二つに分けられまして・・・
- 形態を改善させる手術
- 機能を改善させる手術
この中で、子宮脱とか直腸脱を正しい位置に戻すのは、「形態を改善させる手術」です。
そして
尿失禁を改善させる手術(TOT手術)とか、
排便障害を改善させる手術(直腸瘤経肛門手術)とかは・・・
排尿とか排便とかの「機能を改善させる手術」になります。
TOT手術の難しい点
TOT手術は、「テープの張り加減」がポイントとなります。
ゆるすぎたら尿失禁は改善しないし、きつすぎると尿が出なくなるんです。
だから、↑「尿が漏れず、かつ尿がスムーズに出る」という「ちょうどよい」張り加減に落ち着ける必要があります。
でも、↑尿道の締まりが極端にゆるい人とか、膀胱の収縮力が弱かったりする人だと、「ちょうどよい」ところに落ち着けるのが難しいんです・・・
直腸瘤経肛門手術の難しい点
↑直腸瘤経肛門手術は、「直腸瘤の排便障害」の改善を目的として、行われる手術ですが・・・
実際に排便障害の自覚症状を改善させるのは、なかなか難しいことなんです。
「よくなって満足」と言う人も多いけど・・・
「だいぶいいけどまだ症状残る」とか
「違和感が気になる」みたいに
スキッと治らず、微妙な感じになることもあるんですよね。
それはなぜかといいますと・・・
直腸瘤の排便障害って、直腸瘤だけじゃなくって、↑「粘膜筋肉の動き」とか、「直腸の知覚」とかも関わってくるからです(くわしくはこちら)
だから直腸瘤だけ手術で修復しても、排便障害の自覚症状は、思うように改善してくれないことがあるわけです。
手術で改善できることには、限界があるということですね。
だから、「手術の限界」を十分説明して理解していただいた上で、「それでも手術を受けたい」という人だけ手術適応とするのがポイントとなります。
以上、今回は番外編でした。
赤木一成
辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科