わたし、膀胱瘤の手術を考えてるんです。
手術のメリットとデメリットは、どんなものがありますか? 教えてくださいな。 |
こんな疑問に答えます。
おはようございます。
辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科の赤木一成です。
わたくし木曜午後と金曜午後は、骨盤臓器脱外来をやっています。
手術を考えてる患者さんから、ときどきこの質問が来ます。
今回はこの「骨盤臓器脱手術のメリットデメリット」について、お話してみます。
ただこの質問って漠然としてるから、一言で回答しにくいんですけどね・・・
骨盤臓器脱手術を受けるメリットは、当然「治る」ということです。
これはまあ、あたりまえですね。
最近では、骨盤臓器脱(子宮脱や膀胱瘤)の手術を行った方は、ほぼ全員再発無く治せるようになっています。
年間200例以上の骨盤臓器脱手術を行っておりますが、再発して再手術になるケースは、年間一人いるかいないかという感じです。
手術で骨盤臓器脱が治れば、ほぼ確実に、苦痛から解放されるわけです。
ペッサリーの違和感とか、おりものとかも、当然なくなります。
退院後は何回か、経過観察の通院が必要ですが、その後は通院も不要となります。
いままで我慢してたプールや温泉や旅行にも行けるようになりますよね。
デメリットは、①入院が必要、②合併症リスク、の二つです。
つぎは骨盤臓器脱手術を受けるデメリットです。
入院が必要
まず入院について。
一週間程度の入院が必要なので、スケジュールの都合をつける必要があります。
そして退院後も、しばらくの間、運動や力仕事は避ける必要があります。
手術を受ける場合、入院前に2~3回通院して(診察や術前検査のため)、それから一週間入院します。
退院後は3~5回ほど通院すれば、その後は通院からも卒業です。
病院と関わるトータル日数は、外来と入院を合わせると、12~15日くらいになります。
いっぽうペッサリーを続けて、年3回通院したとしましょうか。
4年~5年たったら、トータル通院日数は12~15日となり、その後はさらに長くなっていきます。
長期的には、早めに手術を受けたほうが、時間的には効率がいいということです。
合併症のリスク
次は合併症のリスクです。
ここ数年は、手術を受けた99%の方が、大きなトラブル無くほぼ予定通りに退院できています。
(「排便排尿の調子が落ち着かない」とか「まだ痛みが残る」とかで、1日~2日ほど退院延長になるのは、「ほぼ予定通り」に含めています)
輸血を要する多量出血とか、臓器損傷で再手術とか、そんな大きなトラブルを起こす頻度は500人中1人以下です。
長期的合併症
長期的な合併症についてはどうでしょうか。
骨盤臓器脱手術でメッシュを使った場合(TVM手術)、「メッシュ露出」というトラブルが、2%くらいの頻度で起こります。
これは術後数か月~数年たって、膣壁の傷から、メッシュが少し露出してくる合併症です。
この場合、露出しているメッシュを小さくカットすればよくなります。
また、これまで「メッシュ感染」を起こした人はいません。
メッシュを使わない手術の場合には、このメッシュ関連トラブルが起こらないので、長期的トラブルの起こる可能性はまず無いと思っていいでしょう。
費用は、長期的には手術を受けたほうが安いかも。
入院や手術は、すべて保険診療で行っています(保険がききます)。
また費用が一定額を超えるようであれば、高額療養費制度からの給付額が出ます。
たとえば70歳以上で一般的所得の方であれば、自己負担限度額は57,600円が上限となります(参考)
ペッサリーで定期的に通院するとどうでしょう。
受診料+交通費で、一回の受診あたり3000~4000円かかるとして計算すると・・・
年3回くらい通院が必要なので、1年あたり1万円ほどかかるでしょうか。
だからペッサリーで長年通院するより、早めに手術を受けた方が、結局安くなる可能性が高いです。
赤木一成 辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科