わたし、子宮脱の手術を受けることになったんです。
後遺症が心配です。 手術を受けても大丈夫なのかしら? |
こんな疑問に答えます。
おはようございます。
辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科の赤木一成です。
合併症と後遺症って、何が違うのかよくわからないですよね。
まず言葉を定義しておきましょう。
分かりやすい記述があったので引用してみます。
合併症は、不具合が一過性で恒久的に残らず、治療が可能なもの。
後遺症は、不具合が半永久的に残るもの。
なるほど。
今回は「後遺症」についての質問なので、この「不具合が半永久的に残るもの」についてお話いたします。
ちなみに、「再発」はまた別の話になるので、再発はここでは触れないことにします。
これら三つの術式について説明してみます。
子宮脱経腟手術・メッシュを使わない方法:後遺症は性交障害くらい
最近当院では技術が進化して、メッシュ無しで治せる症例が増えてきています。
そのためメッシュは、「どうしても必要な症例に限って、最小限に使う」という感じになっています。
経腟手術の大半は、メッシュを使わない経腟手術で治せるようになっているんです。
この術式は「腟側からの手術」なので、膣壁に傷ができます。
だから術後の性生活で、支障(性交時の違和感、性交痛など)が起こる可能性があります。
この術式では、メッシュを使わないので、メッシュ露出やメッシュ感染は起こりません。
また、その他の後遺症(「感染」とか「痛みが何か月も何年も続く」とか)は、今のところ起こった人はいません。
要は、性生活の無い人であれば、この手術の後遺症は「基本的に無い」と考えていいと思います。
子宮脱経腟手術・メッシュを使う方法(TVM手術):メッシュ露出・メッシュ感染・性交障害
メッシュを使う経腟手術(TVM手術)では、メッシュ関連の後遺症を考慮しなければいけません。
それは「メッシュ露出」と「メッシュ感染」のふたつです。
ただしメッシュ感染は、いままで起こった人はいません。
メッシュ露出:2%くらいに起こるが、治せるので後遺症とは違う。
メッシュ露出とは、膣壁からメッシュが露出してくるトラブルです。
これはメッシュの露出した部分を切り取ることで、対処可能です。
ただし、これは傷がふさがれば治るので、「後遺症」ではなく「合併症」というべきものです。
メッシュ感染:起こった人はいない
次にメッシュ感染です。
メッシュ感染とは、メッシュに細菌が繁殖して、化膿する状態です。
もし化膿したら、メッシュを取り除く必要があります。
私が手掛けた1400人を超える骨盤臓器脱(子宮脱・膀胱瘤・直腸瘤)手術で、このメッシュ感染が起こった人はいません。
性交障害:経腟手術では、メッシュの有無に関係なく起こりうる
経腟手術の場合には、膣壁を切って手術するので、膣壁に傷ができます。
だから性交時に、違和感や痛みなどの問題が起こる可能性があります。
子宮脱経腹手術(腹腔鏡下仙骨膣固定術):メッシュ露出・メッシュ感染
性生活を重視する若い人には、↑腹腔鏡下仙骨膣固定術をおすすめしています。
これなら膣壁に手を付けないので、性交障害が起こりにくくなります。
この術式ではメッシュを使うので、やっぱりメッシュ露出やメッシュ感染を起こす可能性があります。
赤木一成 辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科