直腸瘤手術:術式選択基準と、手術をお断りするケース。今週は8例

 

あけましておめでとうございます。

辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科医師の赤木一成です。

 

2023年になりました。

今年もいままで通り、情報発信をコツコツやり続けていこうと思います。

よろしければ、お付き合いください。

 

手術を8例行いました。

この週は、子宮脱膀胱瘤の手術を6例行いました。

いつも通りに手術して、みなさまいつも通りに退院されました。

 

また、70代の方に直腸瘤手術を行いました。

 

「後膣壁(直腸瘤)の脱出」が主訴で、性生活の無い方だったので、経腟手術を行いました。

(主訴って、患者さんが一番苦痛に感じている症状のことです)

 

この場合、後膣壁だけ修復して終わらせると、あとで前膣壁(膀胱瘤)が出てくることがあります。

だから直腸瘤の手術を行う時には、原則として膀胱瘤修復も同時に行うようにしています。

 

さらに、40代の若い方に、直腸瘤の経肛門手術を行いました。

排便障害が主訴で、性交障害に配慮する必要があるため、経肛門手術を選択しました。

 

直腸瘤の2つの術式・当院の使い分け基準

 

わたし直腸瘤の手術を考えてるけど、私はどっちの術式がいいのかしら?

経腟手術と経肛門手術って、どうやって使い分けてるの?

 

当然、こんな疑問が起こりますよね。

当院の使い分け基準は、こちらで詳しく解説していますので、よかったら参照してくださいませ。

 

手術したら、どれくらいよくなるの?

 

手術したら、どれくらいよくなるの?

 

次は、こういう疑問が出てきますよね。

術式によって異なるので、分けて説明してみます。

 

直腸瘤の経腟手術

 

「後膣壁の脱出」が主訴の直腸瘤に対しては、通常この経腟手術が行われます。

 

この手術を行えば、「後膣壁の脱出」に関しては、ほぼ確実に治すことができています参照

 

直腸瘤の経肛門手術

「排便障害」が主訴の直腸瘤には、通常この経肛門手術が行われます。

 

ただし直腸瘤の「排便障害」の症状は、手術をやっても、完全に消失するとは限りません。

なぜかといいますと・・・

 

 

排便障害って、直腸瘤だけが原因となっているわけではないからです。

 

直腸重積とか、粘膜の動きとか、筋肉の動きとか、神経の働きとか・・・

排便って、いろんな要素が関わっている、繊細な行為なんです。

 

だから、手術で直腸瘤だけ修復しても、排便障害の原因がすべて解決するとは限りません。

ある程度、症状が残る可能性があるということですね。

 

 

・・・だから、直腸瘤で経肛門手術を希望される方には、ワタクシ必ず↓こんな説明をしています。

 

排便障害は、直腸瘤だけが原因となっているわけではでなく、他のいろんな要素も関わっています。

だから直腸瘤の手術をしても、排便障害が完全によくなるという保証はできません。

「だいぶよくなったけど、まだ症状が残ってる」とか、

「術前は10だった排便困難が、いまは3くらい」とか、

そんなあいまいな結果になる可能性もあります。

「それでもいいから手術を受けたい」とおっしゃる方のみ、手術を請け負うようにしています。

 

まあ実際には、大半の方が「一生このままじゃ耐えられない」と言って、手術を希望されるんですけどね。

 

手術をお断りするケース

 

直腸瘤があっても、手術をお断りするケースが、ときにあります。

それは・・・

 

「違和感」や「痛み」が主訴の人

であります。

 

違和感の原因が直腸瘤であるとは限らないし、直腸瘤で痛みを生じることはありません。

このような方に、直腸瘤の手術を行っても、主訴が改善するとは限らないですよね。

 

 

このような場合に、↑「どうしてくれる」と責められたら困ります。

 

だから手術を請け負うのは、「手術すればまず確実によくなるだろう」と判断したケースに限るということですね。

手術は万能の治療手段ではありません。できることとできないことがあるんです。

 

このあたりの事情は、↓過去記事も参照になさってくださいませ。

私が手術をお断りするケース

 

新年早々、マニアックな記事で失礼しました・・・

 

 

赤木一成

辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科