骨盤臓器脱手術および直腸脱手術。2022年の手術成績と総括。

 

おはようございます。

辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科医師の赤木一成です。

 

今日は大晦日なので、2022年の総括をいたします。

 

2022年に行った手術の件数

 

女性骨盤底疾患には、↑①骨盤臓器脱(子宮脱・膀胱瘤・直腸瘤・膣脱)と②直腸脱があります。

 

①骨盤臓器脱は、骨盤臓器(子宮・膀胱・直腸)が膣から脱出してくる状態です。

②直腸脱は、骨盤臓器(直腸)が肛門から脱出してくる状態です。

①②を合併しているケースもあります)

 

 

↑そして①②それぞれに、経会陰手術(経膣手術・経肛門手術)と、経腹手術(腹腔鏡下仙骨膣固定手術・腹腔鏡下直腸固定術)があります。

(当院の術式使い分け基準はこちらを参照)

 

私は経会陰手術に徹しており、経腹手術は腹腔鏡チームが担当しています。

 

今年ワタクシが手がけた経会陰手術は・・・

①骨盤臓器脱が281例

②直腸脱が36例(うち骨盤臓器脱との合併例が14例)

(このほかに、他医師が施行した直腸脱経会陰手術が30例あり)

 

また腹腔鏡チームが手がけた経腹手術は・・・

①骨盤臓器脱が79例

②直腸脱が25例(うち骨盤臓器脱との合併例が5例)

 

合わせますと・・・

①骨盤臓器脱手術が360例、②直腸脱手術が91例(うち骨盤臓器脱との合併例が19例)になります。

 

①②を合計すると、当院は今年、451名の女性骨盤底手術を施行したことになります。

 

 

 

手術件数は、2021年と比べて、さらに増加していました。

毎年右肩上がりで増えてきましたが、そろそろ上限でしょうね。

 

多くの手術希望の方をお待たせして、申し訳なく思うのですが・・・

すでに手術予約枠はパンパンで、手術室のキャパシティが限界に近づいており、医師たちも手いっぱいになってるんですよね。

 

これでも全国トップクラスの件数を行っているので、ご容赦いただけたらと・・・

 

2022年の手術実績です。

 

昨年末に引き続き、私が手がけた経会陰手術(骨盤臓器脱手術281例・直腸脱手術36例)の成績を公開します。

(ワタクシ経腹手術はやってないので、こちらの成績公開はいずれ機会があればやります)

 

①骨盤臓器脱(子宮脱・膀胱瘤・直腸瘤・膣脱)の手術成績

 

●術中術後のトラブルについて

骨盤臓器脱手術281例のうち、合併症で入院期間が大幅延長となったケースが1例ありました。

(また骨盤臓器脱以外の手術で、もう1例合併症がありました)

 

残りの280例は、大きなトラブル無く経過し、だいたい予定通りに退院できていました。

一時的排尿異常・便秘・痛み・術後出血などの理由で、1~2日ほど退院が延びた方は、何人かいたんですけどね。

これは「だいたい予定通り」に含めています。

 

●メッシュについて

メッシュ(プラスチック繊維を編み込んで作ったシート)を使ったケースは、1例でした。

過去の手術の再発例で、骨盤底領域の組織がぜい弱になっていたため、メッシュを使った方が良いと判断しました。

残りの280例は、メッシュを使わない経腟手術を行っていました。

 

●再発について

今のところ、今年私が手術した症例で、再発で再手術となったケースは1例です。

再発は将来的に、もう少し増えてくる可能性はありますが、約99%の方は一回の手術で治ると考えていいでしょう。

 

②直腸脱の手術成績

 

近年の直腸脱手術成績は、安定しています。

 

直腸脱手術を行った36例全員が、大きなトラブルなく経過して、だいたい予定通りに退院されていました。

 

再発は、把握している範囲では、いまのところありません。

将来ぽつぽつと再発してくる可能性はありますが、手術すればまず一回で治ると考えていいでしょう。

 

2022年の総括。

 

2010年より女性骨盤底外科(骨盤臓器脱・直腸脱)に本腰を入れ、骨盤臓器脱手術は2000例、直腸脱手術は400例にわたって改良を続けてきました。

 

いずれの手術も、毎年ひとつかふたつ小さい発見・進化があり、それが何年か積み重なってbreakthroughが訪れます。

そうやってやり続けた結果、現在では安全性・再発率ともに、おおむね納得できる域に達した観があります。

 

これからも研鑽を重ねて、究極を目指してゆく所存です。

 

 

赤木一成

辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科