サッカーの話ではありません。骨盤臓器脱のお話です・・・
おはようございます。
辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科医師の赤木一成です。
週末なので、「一週間の骨盤臓器脱手術記録」を書きます。
患者さんを特定できないよう配慮して、数週間前の日常を描写しています。
手術を7例行いました。
この週は、いつもの↑子宮脱+膀胱瘤の手術を6例行いました。
そして1例、比較的若い女性に、↑マンチェスター手術を行いました。
みなさま例によって、だいたい予定通りの退院です。
「便秘」と「痛み」はだれにでも起こりえますが(ときどき「しばらく尿がスムーズに出にくい人」もいます)、それ以外のトラブルはほぼ起こらず経過して退院していきます。
最近「マンチェスター手術」が増えてきてます
最近、マンチェスター手術を希望して、当院を受診される患者さんが増えています。
「マンチェスター手術」って、ちょっと変わった手術名ですよね。
人の名前じゃなくって、イギリスのマンチェスター大学で確立された手術だから、そう呼ばれているんです。
このマンチェスター手術、以前は年に1~2例程度しか行ってなかったんですけど、今年は現時点ですでに7例行っています。
昨年アップした、マンチェスター手術に関する記事を見て、当院を受診されるようです。
みなさん、性生活のある比較的若い女性(40代~50代前半)ばかりです。
悩んでいる事も、みな同じです。
子宮脱で手術を考えているが、夫婦生活があるので、手術して性交障害を生じたら困る。
腹腔鏡手術であれば、膣壁に手を付けないので、性交障害リスクは低いと聞いた。
でも腹腔鏡手術でおなかの中に一生メッシュ(異物)を留置するのも怖い。
そうやって悩んでいたら、マンチェスター手術というのがあるのを知った。これならメッシュを留置する必要が無く、性交障害も起こりにくいようだ・・・
マンチェスター手術が適するタイプの骨盤臓器脱
比較的若い女性(40代~50代前半)の骨盤臓器脱って、過半数が、↑「子宮頸部が『こん棒』のように伸びてきているタイプ」です。
このようなタイプの子宮脱であれば、マンチェスター手術のいい適応です。
体内にメッシュを留置する必要が無く、工夫して手術すれば、性交障害(性交時の痛み・性交不能など)の可能性も低くできるんです。
マンチェスター手術が向かないタイプの骨盤臓器脱
いっぽう、性生活を重視する若い人で、↑「膀胱瘤が大きいタイプ」には、マンチェスター手術はおすすめしていません。
このようなケースにマンチェスター手術をやると、膀胱瘤が再発する可能性があるんですね。
このような場合に取りうる選択肢は、いくつかあります。
①おなかの中に一生メッシュを留置するのを承知の上で、腹腔鏡手術を行う。
(再発は少ない。性交障害リスクは最も低い)
②性交障害を生じる可能性を承知の上で、メッシュを使わない経腟手術を行う。
(再発は少ない。メッシュを使わなくて済む)
③膀胱瘤が再発する可能性が高いのを承知の上で、マンチェスター手術を行う。
(メッシュを使わなくて済む。性交障害リスクは低い)
④当分の間は保存的治療(体操、ペッサリー)を続けて、夫婦生活が無くなってから手術を考える。
どれも一長一短で、正解があるわけではありません。
本人と相談したうえで、どれがいいか決めていただくようにしています。
赤木一成 辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科