初代プレステと初代Wiiです。我が家ではいまだに現役・・・
おはようございます。
辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科医師の赤木一成です。
この週は5月連休のため、私の手術は1例だけでした。
仕事面では特に書くことがないので・・・
今回は、過去の学会発表スライドをベースにして、お話させていただきます。
よろしければ、お付き合いください。
骨盤臓器脱手術には、いろんな「克服すべき課題」があります。
骨盤臓器脱手術を受ける方は、トラブルとか再発とかが心配ですよね。
もちろん医師は、手術前に、これらについて説明を行います。
ところで、この前ある人から・・・
「これらのトラブルが起こる可能性があることは分かりました。でもこれらのトラブルって、どれくらいの確率で起こるんでしょうか?」と聞かれたんです。
たしかに、「確率」については、これまであまり触れてこなかったような気がしますね。
ということで今回は、「骨盤臓器脱手術におけるトラブルの確率」について解説させていただきます。
ほかの手術(直腸脱手術、尿失禁手術など)のトラブルに関しては、いずれあらためて書こうと思います。
↑これは、とある学会で発表したスライドの一部です。
骨盤臓器脱手術にはいろんな「解決すべき課題」がありまして、これまで1800例を超える手術経験の過程で、課題解決に全力を注いできました。
大半は克服できたのですが、まだ解決できてない課題もあります・・・
手術中における課題いろいろ
術中臓器損傷:ほぼ克服
入院期間が大幅延長になるような、明らかな臓器損傷は、初期に1例・2018年に1例・2021年に1例おこりました。
確率は500分の1以下ということです。
あとは癒着の強い人で、術中に「膀胱損傷したかも?」と感じるケースが、年に1例か2例あります。
この場合、あやしい場所を縫合補強しておいて、膀胱鏡で確認するようにしています。
微妙なケースは何例かあったけど、明らかな損傷はありませんでした。
念のためバルーンカテーテル(おしっこの管)留置期間を2日ほど延長して、膀胱を長目に休めることで、すべて問題なく経過しています。
術中多量出血:ほぼ克服
輸血を要するほどの、多量の出血を起こす確率は、500分の1以下です。
99.8%以上の方は、大丈夫ということですね。
直腸脱合併例への対処:ほぼ克服
子宮脱には時々、直腸脱を合併していることがあります。
初期には二回に分けて手術を行っていましたが、今はすべての症例で、同時に手術できるようになっています。
重度子宮脱への対処:ほぼ克服
子宮脱には、↑軽度(左)のものから重度(右)のものまで、いろいろあります。
かつては、重度子宮脱に対してTVM手術を行うと、アームがずれて再発することがありました。
(だから重度子宮脱には腹腔鏡手術を選択する施設もあります)
術式改良が進んだ結果、近年では重度の子宮脱であっても、経腟手術で再発なく治せるようになっています。
処理能力(=手術時間):ほぼ克服
初期の骨盤臓器脱手術は、2時間半くらいかかっていました。
1日1件手術したら、集中力を使い果たして、その日は終了でした・・・
現在では手順が確立されて、だいたい1時間15分くらいで終わるようになっています。
(重症例や癒着の強い場合には、1時間半近くかかることもあります)
やろうと思えば、1日3件の骨盤臓器脱手術を行うことが可能です。
ワタクシ的には、1日3件の日々が続くと身が持たないので、原則2件(プラス小手術1件)にとどめています。
麻酔:今まで事故が起こったことは無い
あと、ここでは詳しく触れませんけど、麻酔の不安もありますよね。
「麻酔かけたらちゃんと目が覚めるの?」という不安に思ってる方が、時々いらっしゃるんです。
当院ではこれまで数千件の全身麻酔手術を行ってきましたが、麻酔の事故は一件も起こっていません。
次回、「術後編」に続きます・・・
赤木一成 辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科