わたし、子宮脱の手術を受ける予定なんです。
手術で傷を縫うことになると思うんだけど、これって抜糸するんですよね? 抜糸は痛いって聞いてたので心配です。 |
こんな疑問に答えます。
おはようございます。辻仲病院柏の葉 骨盤臓器脱外科医師の赤木一成と申します。
その患者さんから、術後によく聞かれる質問の一つについて、今回お話いたします。
その質問とはこれです。
「抜糸するんですか?」
子宮脱や膀胱瘤の手術では、基本的に抜糸は必要ありません。
子宮脱や膀胱瘤、そして直腸瘤とかの手術では、わたくし3種類の糸を用いてます。
ひとつは「①非吸収糸」といいまして、分解されずにずっと役目を果たし続ける糸です。
これは血管とかを縫うときに使う糸なんですね。
子宮脱や膀胱瘤の手術でも、子宮をしっかり持ち上げて支えたり、メッシュを固定したりする時に使っています。
もうひとつは「吸収糸」といいます。
これは術後しばらくしたら、溶けて体内に吸収されて、役目を終える糸です。
これは腸管とかを縫うのによく使います。
吸収糸には、「②しばらく頑張り続けてから溶ける糸」と、「③わりと早く溶ける糸」があります。
前者は膀胱瘤とか直腸瘤の壁を、しっかり縫って補強するのに使います。
そして後者は膣壁を縫うのに使っています。
「溶ける糸」って面白いんですよ。
膣壁は「③わりと早く溶ける糸」で縫っています。
退院後は3週間目に外来に来ていただくんですけど、この時には全員糸が残っています。
その次の外来は3か月後なんですけど、この時には全員糸が無くなって、きれいに治っているんです。
むかしこの「③わりと早く溶ける糸」を何本かもらって、医局の机で縫合の練習をしていたことがあります。
数日間はふつうに練習できますが・・・
この糸をしばらく放置して、数か月後にまた練習で使おうとすると、触ったとたんにぽろぽろと崩壊していくんですね。
燃え終わった蚊取り線香の灰みたいな感じです。
なんでこの吸収糸、ボロボロになるかというと、「加水分解」という現象が関与しています。
みなさん高校の化学で習いましたよね。
当時は「こんなの勉強してなんの役に立つのか?」とか思ってたけど、ちゃんと役に立ったわけですね。
作成:赤木一成 辻仲病院柏の葉 骨盤臓器脱外科