骨盤臓器脱外科医師の赤木一成です。
今回は、「メッシュの合併症」および「メッシュの進化」について、解説させていただきます。
目次
骨盤臓器脱経腟メッシュ手術(TVM手術)ってどんな手術?
↑TVM手術って、膣側からメッシュを留置する手術です。
(a)膣壁を切開して、(b)メッシュを固定して、(c)メッシュを靭帯に通してハンモック上に吊り上げる方法です。
「子宮を温存でき、再発が少ない」ということで、わが国でも一時期、一世を風靡しました。
(それまでの術式は、子宮を取る必要があり、再発しやすかったので、TVM手術は画期的だったんです)
ただしこのTVM手術、全盛期は長く続きませんでした。
メッシュ露出やメッシュ感染などのトラブルが相次ぎ、欧米では行われなくなったんですね。
わが国もそれにならって、TVM手術は下火となっていき、現在に至ります。
「TVM手術って危険なの?」と聞かれたら
「TVM手術って危険なの?」
この質問、何度もうけたことあります(骨盤臓器脱手術やってる医師であればみな同じでしょう)
ワタクシこんな質問受けたとき、↓このようにお答えしてます。
「修練を積んだ術者がやれば、そんなに危険ではないけど、メッシュトラブルの可能性はあります」
でもこれってTVM手術に限らず、どの手術でも同じことですよね。
TVM手術は異物(メッシュ)を体内に埋め込むので、トラブルが起こった時に、対処が難しくなりやすいという話です。
TVM手術の合併症①:メッシュ露出
私の経験上・・・
TVM手術で起こるトラブルって、↑膣壁メッシュ露出くらいで、他は特に深刻なトラブルは経験していません。
これは、膣壁の傷からメッシュが露出してくるトラブルです。
私の場合、全体の2%くらいに起こってました。
欧米のカップルだと、年をとっても性生活を重視する(らしい)ので、この膣壁メッシュ露出は問題なんでしょうけど・・・
日本人でTVM手術を受ける年代の人は、だいたい性生活を卒業してるから、患者さんは別に困ってないんですよね。
仮にメッシュが露出しても、露出したメッシュを小さく切り取ればよくなるので(日帰りか一泊でできる)、対処は難しいものではありません。
TVM手術の合併症②:メッシュ感染
もうひとつ、TVM手術で起こりうるトラブルとして、「メッシュ感染」があげられます。
メッシュに細菌が感染して、化膿するトラブルです。
このメッシュ感染が起こったら、感染源となっているメッシュを取り除く必要があります。
今のところ、私が過去に手がけたTVM手術で、感染を起こした人はゼロです。
(他医師のTVM手術をうけて、メッシュ感染起こして、紹介されてきたことは何度かある)
きちんと清潔操作を心がければ、メッシュ感染はそんなに心配いらないんだろうと思ってます。
メッシュは徐々に縮小し、最終的に不要となった
↑メッシュって、「プラスチック繊維を編み込んで作った医療用シート」のことです。
やっぱり異物ですから、体内に一生留置するのは不安ですよね。
↑初期には「大きいメッシュ」が主流で、当院もこのタイプのメッシュを使っていました。
そして時とともに、「メッシュの必要性が高い場所」「そうでない場所」の違いが分かってきて、メッシュは徐々に小さくなっていきました。
数年の歳月を経て、メッシュは極限まで小さくなっていきました。
膣側からの手術(経腟手術)であれば、全員メッシュを使わず治せる時代
そこからさらに工夫を重ねた結果、↑最終的にメッシュを使わなくても、メッシュ手術と同等の効果が得られる方法が確立されました。
直近6年間にわたって、私が行う経腟手術は、↑すべてメッシュを使わずに手術できています。
(大半がこの「メッシュ無し子宮温存手術」で、一部が「マンチェスター手術」)
じゃあもうTVM手術は必要ないってこと?
そうですね。
私に関して言えば、もう骨盤臓器脱経腟手術で、メッシュ(TVM手術)は必要ありません。
(経腹手術〔腹腔鏡下仙骨膣固定術〕では、いまだに体内にメッシュ留置が必要)
直近1000例ほど、すべてメッシュを使わない手術を行うことができています。
いまのところ、再発は1%程度です。
ほぼ全員を、一度の手術で治せていると言っていいでしょう。
よろしければ、ご相談ください。
赤木一成 骨盤臓器脱外科医師