おはようございます。
辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科医師の赤木一成です。
今回はひさしぶりに、「直腸脱」についてお話させていただきます。
マニアックですが、よろしければお付き合いください。
直腸脱手術、いろんな課題への取り組み
直腸脱って、直腸が肛門から脱出してくる病気です。
大半は、やせ形体形の、80代くらいの高齢女性に認められます。
当院では、年間約100例の直腸脱手術を手がけています。
私が知る限り、たぶん全国最多の件数ではないかと思います。
平成元年に、↑旧本院(東葛辻仲病院)が開設されて以来、当院では3000件くらいの直腸脱手術を手がけてきました。
その歴史は・・・
- 再発率を低くする
- 手術の侵襲(ダメージ)を小さくする
- 術後出血をなくす
- 「人手×手術時間」を最小化する
等いろんな課題に対する取り組みであり、そのために無数の工夫を加え続けて現在に至ります。
直腸脱手術には、↑経肛門手術(肛門側からやる手術)と経腹手術(おなか側からやる手術)があります。
侵襲が小さいのは、経肛門手術(デロルメ法など)です。
経腹手術(腹腔鏡下直腸固定術)は、おなかにガスを入れて膨らませて、内臓を切ったり縫ったりして、手術時間が長くかかるので、侵襲が大きくなります。
少ない人手で、短時間でできるのも、経肛門手術です。
経肛門手術は、医師一人(+助手のスタッフ一人)で、1時間程度でできます。
経腹手術は、医師だけで2~3人が必要で、2時間くらいかかります。
患者さんの高齢化が進行し、かつ外科医不足のこのご時世では・・・
「できるだけ経肛門手術で行うのが合理的」ということです。
でも残念ながら・・・
すべての直腸脱を、経肛門手術で治すのは困難なんですよね。
経肛門手術が向くのは、軽度~中等度の直腸脱です。
経肛門手術を、重度の直腸脱に行うと、再発しやすくなります。
このような場合には、経腹手術が必要なんです(ただし経腹手術は、粘膜脱主体の軽度直腸脱には向かない)
現在取り組んでいる課題
「直腸脱患者さんの高齢化」
「外科医不足」
経肛門手術で治せる比率を増やせれば、これらの課題に対する、有効な一手となります。
ということでワタクシ、「重度の直腸脱も経肛門手術で治せるようになる」というテーマを追求しています。
たとえば、医師なら誰だって頭を悩ませそうな、こんなケース・・・
- 重度の直腸脱
- 90代の超高齢者
- 心臓や肺に持病があって全身麻酔は不安
- ↑背中が曲がってて経腹手術は困難そう
- 腹部手術歴があって癒着してそう
このような困難症例を、腰椎麻酔(下半身麻酔)+経肛門手術できっちり治せるようになったら、素晴らしいことだと思いませんか?
ということでワタクシ、これを医師人生における「永遠のテーマ」のひとつに据えて、熟考と改良を続けています。
赤木一成
辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科