直腸脱手術における永遠のテーマ。そして改良は続く・・・

  • 2023年3月11日
  • 2023年3月11日
  • 直腸脱

 

おはようございます。

辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科医師の赤木一成です。

 

今回はひさしぶりに、「直腸脱」についてお話させていただきます。

マニアックですが、よろしければお付き合いください。

 

直腸脱手術、いろんな課題への取り組み

直腸脱って、直腸が肛門から脱出してくる病気です。

大半は、やせ形体形の、80代くらいの高齢女性に認められます。

 

当院では、年間約100例の直腸脱手術を手がけています。

私が知る限り、たぶん全国最多の件数ではないかと思います。

 

 

平成元年に、↑旧本院(東葛辻仲病院)が開設されて以来、当院では3000件くらいの直腸脱手術を手がけてきました。

 

その歴史は・・・

  • 再発率を低くする
  • 手術の侵襲(ダメージ)を小さくする
  • 術後出血をなくす
  • 「人手×手術時間」を最小化する

等いろんな課題に対する取り組みであり、そのために無数の工夫を加え続けて現在に至ります。

 

 

 

直腸脱手術には、↑経肛門手術(肛門側からやる手術)経腹手術(おなか側からやる手術)があります。

 

侵襲が小さいのは、経肛門手術(デロルメ法など)です。

経腹手術(腹腔鏡下直腸固定術)は、おなかにガスを入れて膨らませて、内臓を切ったり縫ったりして、手術時間が長くかかるので、侵襲が大きくなります。

 

少ない人手で、短時間でできるのも、経肛門手術です。

経肛門手術は、医師一人(+助手のスタッフ一人)で、1時間程度でできます。

経腹手術は、医師だけで2~3人が必要で、2時間くらいかかります。

 

患者さんの高齢化が進行し、かつ外科医不足のこのご時世では・・・

「できるだけ経肛門手術で行うのが合理的」ということです。

 

 

 

でも残念ながら・・・

すべての直腸脱を、経肛門手術で治すのは困難なんですよね。

 

経肛門手術が向くのは、軽度~中等度の直腸脱です。

 

経肛門手術を、重度の直腸脱に行うと、再発しやすくなります。

このような場合には、経腹手術が必要なんです(ただし経腹手術は、粘膜脱主体の軽度直腸脱には向かない)

 

現在取り組んでいる課題

 

「直腸脱患者さんの高齢化」

「外科医不足」

経肛門手術で治せる比率を増やせれば、これらの課題に対する、有効な一手となります。

 

ということでワタクシ、「重度の直腸脱も経肛門手術で治せるようになる」というテーマを追求しています。

 

 

たとえば、医師なら誰だって頭を悩ませそうな、こんなケース・・・

  • 重度の直腸脱
  • 90代の超高齢者
  • 心臓や肺に持病があって全身麻酔は不安
  • ↑背中が曲がってて経腹手術は困難そう
  • 腹部手術歴があって癒着してそう

 

このような困難症例を、腰椎麻酔(下半身麻酔)+経肛門手術できっちり治せるようになったら、素晴らしいことだと思いませんか?

 

ということでワタクシ、これを医師人生における「永遠のテーマ」のひとつに据えて、熟考と改良を続けています。

 

 

赤木一成

辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科