すいません。わたくし老人病院の医師です。
ときどき入院患者さんの直腸脱が脱出してて、困ることがあるんです。 専門病院にすぐ紹介できないことも多いので、とりあえずの対処として、直腸脱の戻し方を教えてくれませんか? |
こんな疑問に答えます。
おはようございます。
辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科の赤木一成です。
今回は、どちらかといえば、医療従事者向けのネタです。
老人病院から、ときどき電話で相談をいただくことがあります。
「入院中の患者さんの直腸脱が脱出して、痛がってます。今日は受診させられないので、とりあえず直腸の戻し方を教えてほしい」
承知しました。
直腸脱の戻し方:ガーゼを使って押し込む方法があります。
まずこのような場合には、手で押し込むのが基本です。
でもそれだけではうまくいかないこともあります。
この場合、ガーゼを使って押し込む方法があります。
ガーゼの摩擦力を使って、直腸脱を押し込んでいく方法なんですね。
いい方法で、私もときどきこの方法を行っています。
そしてこれでうまくいかない場合には、私はやったことないですが、砂糖を使う方法もあるそうです。
砂糖を直腸粘膜にかけたら直腸粘膜のむくみが取れるので、押し込みやすくなるわけですね。
面白いこと思いつく人がいるものです。
ただこの砂糖を使う方法、浮腫(むくみ)で腸管が戻りにくい場合には有効だと思いますが、炎症で粘膜がカチカチになっている場合にはどうなんでしょうかね?
それでも戻らなければ、麻酔かけて押し込むか、緊急手術が必要です。専門病院へ紹介を。
それでも戻らない場合は、「嵌頓(かんとん)直腸脱」といいまして、緊急事態です。
放置しておくと、腸管が壊死してしまいます。
麻酔かけて腸管を押し込む必要があるので、すぐに専門病院へ紹介してくださいね。
この嵌頓直腸脱って、過去の直腸脱手術で留置された、ティールシュ法の糸が原因となっていることが多いです。
この糸の締まりが強すぎて、直腸脱の首がくくられたようになっているんです。
麻酔をかけて、この糸をカットして、肛門を広げてから直腸を戻す必要があります。
いずれにせよ、直腸を押し込んでも戻らないようであれば、嵌頓直腸脱で緊急事態です。
(するっと戻って、またすぐ出てくるのであれば、それは嵌頓してないので待てます)
専門病院へ紹介をおすすめします。
赤木一成 辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科