わたし、子宮脱の手術を受ける予定なんです。
もともと貧血気味なんだけど、手術で出血する心配はないのかしら? |
こんな疑問に答えます。
おはようございます。
辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科の赤木一成です。
子宮脱とか膀胱瘤の手術で、出血に関する質問をときどきいただきます。
今回は、この出血について、説明をいたします。
骨盤臓器脱(子宮脱・膀胱瘤・直腸瘤)の手術では、そんなに出血の心配はいりません。
ここでは最も多い、膣側からの手術(経腟手術)について説明しようと思います。
肛門側からの手術(経肛門手術)は、話がまた違ってくるので、これについてはいずれあらためて説明します。
手術に関する出血は、「手術中に起こる出血」と、「手術後に起こる出血」に分けられます。
手術中に起こる出血
まず「手術中に起こる出血」について。
この出血は、粘膜をはがして、深いところにある靭帯(仙棘靭帯)に進むときに起こりやすいです。
もうひとつ、この靭帯に糸をかける操作時にも、出血することがあります。
この二つの操作は、手術の序盤10分に集中しています。
だからこの骨盤臓器脱手術って、最初の10分が一番緊張します。
ただ最近は技術が熟達してきたため、出血が起こってあわてるような事態はまれです。
手術後に起こる出血
もうひとつ「手術後に起こる出血」について。
これは、膣壁にできた傷(赤矢印)がこすれて出血するパターンです。
この出血は、術後2週間までに起こることが大半で、その後はめったに起こりません。
とくに「血液サラサラの薬(抗血栓薬)」を飲んでる人に起こりやすいです。
このタイプの出血は、少量のじわじわした出血なので、あわてる必要はありません。
病院に来てもらって、外来処置で数分で止血できます。
これまで1300人以上手術して、輸血を要した人は2人です。現時点では確率1/500以下。
これまで10年間にわたって、1300人以上の骨盤臓器脱(子宮脱や膀胱瘤)の手術を行ってきました。
そのうち多量の出血を起こして、輸血を要したケースは2例です。
確率で言えば、500分の1以下ということになりますね。
だから患者さんに手術説明をするときにも、「多量に出血するのは500人中1人」=99.8%は大丈夫。 とお話ししています。
赤木一成 辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科