骨盤臓器脱手術で二番目に重要な操作:穿刺(せんし)について

おはようございます。

辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科の赤木一成です。

 

過去の記事で、骨盤臓器脱手術で最重要の操作:剥離についてというテーマで、お話しさせていただきました。

今回は、骨盤臓器脱手術で二番目に重要な操作として、「穿刺(せんし)」のお話をします。

 

この「穿刺」って、要は「刺す」ことです。

仙棘靭帯」というしっかりした靭帯を、「穿刺用ニードル」という器具で刺して、靭帯に糸を通す操作を行います。

 

骨盤臓器脱手術の最重要ステップ:剥離(はくり)

子宮脱とか膀胱瘤の手術では、とても深いところまで剥離(はくり:はがすこと)を進めていきます。

膀胱の前を切って、深く深く掘り下げていって、尾てい骨の近くにある「仙棘靭帯」という場所まで進めていくんです。

このルートのすぐ隣に膀胱があります。そして血管もあります。

臓器損傷や出血との隣り合わせで、緊張する作業です。

 

骨盤臓器脱手術で二番目に重要なステップ:穿刺(せんし)

そして仙棘靭帯に到達したら、つぎは「穿刺」といって、この靭帯に糸をかける作業を行います。

この作業って、難度が高いんです。

 

写真の1が「ブレイスキー鉤」、2が「穿刺用ニードル」(先端にナイロン糸を通してある)、3を「フック」といいます。

 

この「穿刺」の作業では、穿刺用ニードルの先端に通してあるナイロン糸を、フックを使って拾い上げる必要があります。

 

これって、狭くて深いところで行う作業なんです。

 

①直接見ながらやる方法

経験の浅いうちは、写真の「ブレイスキー鉤」という器具を使います。

この器具で創を広げ、視野を確保して、ニードルの先端を直接見ながら糸を拾います。

 

直接見ながらやれるので、初心者向けの方法です。

でもその分、創が大きくなるから、ダメージが大きくなるんです。

 

これで視野が不十分な場合には、ブレイスキー鉤でさらに創をメリメリと広げていく必要があります。

無理してしまうと、当然出血するリスクが生じてきます。

最悪の場合、膀胱や直腸を損傷してしまうんですね。

 

②指先の感覚頼りでやる方法

 

熟達してくると、人差し指が一本入るだけのスペースで、この操作を行えるようになります。

わずかな隙間からフックを突っ込んで、ニードルの先端を見ずに指先の感覚だけで、この糸を拾い上げるんですね。

 

これだと究極に小さい傷でできるので、ダメージは最小限です。

でも技術的には難しいです。そして余計な組織をひっかけると出血します。

安定して安全確実に行うのは、容易なことではありません。

 

わたしも今でこそ、この操作を当たり前にやってますけど、これって相当の修行が必要でした。

 

赤木一成 辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科