おはようございます。
辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科の赤木一成です。
当院では年間100例くらいの直腸脱手術を行っています。
今回は、たまーに行われる直腸脱術式その③として、PPHという術式についてお話いたします。
PPHは、器械を用いて直腸粘膜脱を治す行う方法です。
画像引用:ETHICON
直腸脱の術式の一つに、PPHというものがあります。
これは特殊な器械↑を用いて、直腸脱を治す方法です。
たるんで脱出してくる直腸粘膜を、リングみたいに切り取ります。
↑直腸粘膜だけが脱出してくるような、軽症の直腸脱(直腸粘膜脱)に行えば、きれいに治すことができます。
その一方で、↑直腸が筋層と一緒に大きく脱出してくる直腸脱(完全直腸脱)は、このPPHで治すことはできません。
このようなケースでは、デロルメ法とかを行う必要があります。
もともと痔核の術式として普及しましたが、最近あまり行われなくなりました。
このPPH、15年ほど前に「痔核の最新治療」としてイタリアから導入されて、一世を風靡しました。
でもその後、PPHはあまり行われなくなっていきます。
一つ目の理由は、「PPHが向く痔核」と「向かない痔核」が分かってきたこと。
PPHが向くのって、「↑3つの痔核サイズが揃っている」タイプの痔核です。
でもこんなタイプの痔核って、多数派ではありません。
「↑一個だけ大きく出てくるような痔核」にはPPHは向きません。
でも実際には、こんなタイプの痔核の方が、多数派なんですよね。
もう一つの理由は、↑ジオンという注射薬の登場です。
PPHは粘膜を切り取るので、時に術後出血が起こります。日帰りでやるには敷居が高いです。
でもジオンは注射するだけなので、出血するリスクがほぼ無く、日帰りクリニックとかで一気に普及したんですね。
現在でも直腸粘膜脱に対して、行われることがあります。
直腸粘膜脱は、この「3つの痔核サイズが揃っている」タイプの痔核と、似たような形態をしています。
だからPPHを行うと、きれいに治すことができるんです。
当院では現在でも、直腸粘膜脱に対して、たまに行うことがあります。
赤木一成 辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科