骨盤臓器脱手術のメッシュは進化した:必要なケースだけ、最小限に。

 

わたし、子宮脱で手術を考えてるんです。

メッシュは必ず使うの?

異物を体内に入れても大丈夫?

こんな疑問に答えます。

 

 

おはようございます。

辻仲病院柏の葉 骨盤臓器脱外科医師の赤木一成です。

 

わたくしこれまで10年にわたり、1400例以上の骨盤臓器脱手術(子宮脱、膀胱瘤、直腸瘤)を行ってきました。

 

私が骨盤臓器脱手術を始めたのは2010年ですが、ちょうどこのころに「TVM手術」が普及し、骨盤臓器脱手術に革命的進化が起こっていたんです。

「子宮を取らず、画一的な手順でできて、再発が少ない」という画期的な方法で、急速に普及したんですね。

そしてこのTVM手術、ここ10年でさらに進化していきます。

 

骨盤臓器脱手術で使うメッシュは、進化してどんどん小さくなってきました。

 

初期のTVM手術では、大きなメッシュが使われていました。

上図の左上(茶色)のような形で、2枚のメッシュを使って、「できるだけ大きいメッシュで、膣全体を広く覆う」という考え方です。

これでほとんど再発がなくなって、画期的な出来事だったんです。

 

そしてその後、メッシュは進化していきます。

「メッシュが必要な場所」と「メッシュが無くてもいい場所」というのが分かってきて、「メッシュが必要な場所」だけメッシュを使う、というふうに進化してきたんですね。

そうやって当院では、メッシュは青→オレンジ→緑という風に、どんどん小さくなっていきました。

 

そしてメッシュ素材も、当初は米国製のものしか使えなかったんですが、いまでは国産の素晴らしいメッシュを使えるようになっています。

この10年間で、骨盤臓器脱の手術は、大きく進化したわけですね。

 

メッシュのトラブルって、たまに露出する程度で、重大トラブルはまずありません。

 

メッシュは体内にとって「異物」ですから、そのトラブルが心配ですよね。

 

でも実際には、これまで何百人にもメッシュを使ってきて、メッシュ関連のトラブルってほとんどありません。

 

 

たまにあるのは、↑「メッシュ露出」というトラブルです。

膣壁の手術創から、メッシュがちょっぴり露出してくることがあるんです。

この「メッシュ露出」は、2%くらいの確率で起こります。

この場合、メッシュの露出部位をカットすればよくなるので、今まで大きな問題になったことはありません。

最近では技術が洗練され、メッシュを使う比率も少なくなってきたため、当院ではメッシュ露出をほとんど経験しなくなりました。

 

もうひとつのメッシュトラブルは、「感染」です。

でも感染には細心の注意を行っているため、いままでこの感染を起こした人はいません。

 

今ではさらに技術が進化し、当院ではメッシュを使わずに治すケースが主流になってきました。

 

そしてさらに、技術は進化していきます。

 

当院ではこれまで、「全例にメッシュを使う」ことを前提とした手術が行われていました。

 

それがさらに進化して、メッシュは「可能な限り使わずに治す」「必要なケースだけに限定して、最小限に使う」という風に進化したんです。

 

当院ではメッシュを使う比率は年ごとに減少し、メッシュを使わずに治すケースが主流となってきています。

 

そしてそれでも、再発はほぼ起こっていないんです。理由は二つあって・・・

「メッシュ無しで治す手術」の技術が進化したこと。

「メッシュ無しでもいける」とか「これはメッシュ使わないと再発しそう」という見極め力が向上したこと。

 

この「メッシュを使うか使わないか」って、医師の術中の判断に任せると、いちばんいい結果が得られます。

 

赤木一成 辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科