子宮脱手術を受けます。リスクはあるの?

 

わたし、子宮脱の手術を考えています。

手術のリスクはどんなものがありますか?

こんな疑問に答えます。

 

 

おはようございます。

辻仲病院柏の葉 骨盤臓器脱外科の赤木一成です。

 

手術を希望される方から、「リスクはどんなものがありますか?」と聞かれることがあります。

この機会に、すべてまとめて解説してみます。

 

ぜんぶ事実を書いています。

スタッフや同僚もこの記事は読めるので、嘘を書くことはできません。

もし将来、これより成績が落ちるようなことがあれば、必ずこの記事は訂正します。

 

※これはもっとも頻度の高い、経腟手術(子宮脱・膀胱瘤・直腸瘤)に関するお話です。

直腸脱手術はもっとシビアになるので、またあらためて解説します。

 

前提:「100%安全・合併症リスクゼロ」の手術は、この世に存在しません。

 

まず前提として、100%安全でリスクゼロの手術は、この世に存在しません。

これは全国どこの病院であっても、どんな名医であっても、どの領域の手術でも、同じことです。

 

人体に起こる無数の生命現象を、人間である医師が全て完璧にコントロールするのは、しょせん不可能なんだと思っています。

 

われわれは、合併症リスクと再発リスクを限りなく0に近付けるべく、これまで10年にわたって研鑽を続けてきました。

その結果、近年の安全性と成績は、飛躍的に高くなったと言えます。

 

要約:約99%がほぼ予定通りに退院し、約99%が一回の手術で完治しています。

 

約99%の人が、大きなトラブル無く経過し、ほぼ予定通りに退院。

ここ3年(2017~2019)では、わたくし年間200例を超える子宮脱や膀胱瘤の手術を手がけています。

そしてほぼ全員が、大きなトラブル無く、ほぼ予定通り退院できていました。

(排尿排便の状態で、1~2日ほど入院が延長することはありますが、これは「ほぼ予定通り」に含めています)

 

トラブルで入院期間が数日延長となるのは、年に一人か二人くらいです。

(ほとんどは、尿が出にくいor出ないために、しばらくバルーンカテーテル再留置となるケース)

 

参考:子宮脱膀胱瘤の手術が不安な方へ。99%の方はほぼ予定通り退院してます。

 

近年では約99%の人が、一回の手術で完治。

ここ3年(2017~2019)で、わたくし600例以上の子宮脱膀胱瘤手術をおこなっています。

このうち再発で再手術を行ったのは、いまのところ2例です(再発率0.3%)

 

再発率は将来もう少し高くなると思われますが、それでも1%くらいに落ち着くだろうと考えています。

 

参考:子宮脱や直腸脱の手術:再発可能性はどれくらい?

 

かつては年に数件、子宮脱膀胱瘤手術後に生じた再発に対して、再手術を行っていました。

近年では再発が起こらなくなり、この再手術を行うことは、ほぼなくなっています。

 

麻酔のリスクは限りなく0に近い。

 

「麻酔かけたら目が覚めなくなるんじゃないか」と心配する人がいます。

その心配はありません。

 

これまで数千件の骨盤臓器脱手術を行いましたが、麻酔の事故はゼロです。

 

麻酔を安全にかけられるか確認するために、十分な検査を行っています。

私と麻酔科ドクターでダブルチェックを行い、安全性を確認できた場合のみ手術OKとなります。

その結果、麻酔の安全性はきわめて高くなっています。

 

検査で異常が見つかって、麻酔のリスクが高いと判断した場合には、手術を延期します。

そして専門家に、異常の治療を依頼します。

 

手術中の重度トラブル(多量出血や臓器損傷)のリスクは、1/500以下。

 

子宮脱や膀胱瘤の手術であれば、多量の出血が起こることはまずありません。

また重度の臓器損傷で、緊急再手術を要するような事態もきわめてまれです。

 

わたくしこれまでに、1400人の子宮脱膀胱瘤の手術を手がけてきましたが、このような事態(多量出血、重度臓器損傷)に至った方は過去に2名いました。

リスクは1/500以下ということですね。

 

そして近年では、このような重大トラブルは起こっていません。

 

術後(入院中)のリスク

 

肺血栓塞栓症(エコノミークラス症候群):いまのところゼロ。

この肺血栓塞栓症って、下肢の静脈瘤にできた血栓が、肺に飛んで起こるトラブルです。

このトラブルは、いままで私が手掛けた手術患者さんの中で、起こった人はいません。

術前に下肢静脈瘤の確認を行い、必要に応じて下肢エコー検査を行うことで、最善の対策を取っているんです。

その他の臓器トラブル(心臓、肺、腎臓、肝臓など)に関しても、今まで起こった人はいません。

術前検査で、心電図(心臓の検査)、呼吸機能検査と胸部レントゲン(肺の検査)、血液検査(腎臓や肝臓や貧血などの検査)をすべて行って、リスクがないことを確認しているからです。

もしリスクが大きいと判断したら、骨盤臓器脱手術を延期して、そちらの治療を優先させます。

 

術後出血:たまにあるが、ほとんどが少量ですぐに止血可能。

入院中に出血する人が、年に数名います。

この出血は、膣壁の傷からの出血で、量は少ないことがほとんどです。

病棟で無麻酔で止血可能です。

 

参考:子宮脱の手術を受けるけど、出血は大丈夫? 99.8%は大丈夫と言えます。

 

排尿が落ち着かない:時々あるが軽快してくる。

手術で膀胱が刺激を受けて、しばらく排尿が落ち着かない人がいます。

「トイレが近い」「尿意が多い」という症状が起こります。

これはいずれ軽快してきます。

 

術後(退院後)のリスク

 

メッシュ露出:以前は2%くらいあった。最近はめったに見ない。

子宮脱手術でメッシュを使った場合、あとで傷口からメッシュが露出してくることがあります。

このメッシュ露出が生じるリスクは、2%くらいです。

 

最近では技術が洗練され、ほとんどメッシュを使わなくなったので、メッシュ露出はめったに見かけなくなりました。

 

感染:いまのところゼロ。

私がこれまでに執刀した骨盤底領域の手術(骨盤臓器脱・直腸脱)は、1700例くらいです。

 

このうち、骨盤臓器脱(子宮脱・膀胱瘤・直腸瘤)手術は1350例以上行っていますが、感染した人はいません。

 

性交障害:いままで苦情をいただいたことは無い。

わたくしの場合、原則として膣側からの手術(経膣手術)を選択しています。

 

性生活を重視する若い人に限り、膣壁に手を付けない腹腔鏡手術をおすすめしています。

 

この方針で、これまで性生活に関する苦情をいただいたことはありません。

 

術後に生じる尿もれ:時々ある。もともと締まりがゆるい人に起こる。

子宮脱膀胱瘤の手術で、尿道の圧迫が解除されることで、術後に尿が漏れやすくなる人がいます。

 

これは手術の合併症ではなく、「もともと尿道のしまりがゆるくて尿が漏れやすい体質だった」ということです。

 

尿が漏れやすくなった場合には、治療することで治せます。

 

再発:最近ではほとんど無い。

先述のように、再手術を要する再発は、近年では1%以下です。

 

 

赤木一成 辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科