骨盤臓器脱手術で用いる二種類の糸と、「抜糸」のおはなし。

ここは手芸店なのですが・・・(笑)

 

おはようございます。

辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科医師の、赤木一成です。

 

今回は小ネタです。

「手術で用いる糸」のお話をさせていただこうかと。

 

よろしければ、お付き合いください。

 

手術で用いる二種類の糸と、「抜糸」のおはなし。

たまーに、「抜糸は必要ないんですか?」という質問を、いただくことがあります。

 

 

・・・はい。抜糸は原則、必要ありません(たまに例外はありますけどね)

 

骨盤臓器脱手術で用いられる糸って、おおきく二種類に分けられますが、どっちも抜糸は不要です。

 

少しくわしく解説してみます。

 

 

 

骨盤臓器脱手術で使っている糸は、2種類に分けられます。

  • 体内にずっと残り続ける糸(非吸収糸)
  • しばらくしたら溶けて消える糸(吸収糸)

 

体内にずっと残り続ける糸

画像引用

 

上図で言えば、「仙棘靭帯固定術」の操作に、「体内にずっと残り続ける糸(非吸収糸)を用います。

これは心臓外科や血管外科の領域でも用いられている、高品質の糸です。

 

子宮はある程度の重量があり、この子宮を生涯にわたってしっかり支える必要があるから、ここには非吸収糸が用いられるわけですね。

 

 

「糸が体内にずっと残って、問題は生じないの(感染を起こす心配は無いの)?」と思う方も、いらっしゃるかもしれませんね。

 

これまで2000人以上の骨盤臓器脱手術で、この非吸収糸を使ってきましたが、糸が原因で感染が起こったことはありません。

まあ、心臓の血管を縫ったりする糸ですからねえ。感染起こったら困りますよね。

 

 

しばらくしたら溶けて消える糸

 

 

 

↑「前膣壁形成術」の操作では、「しばらくしたら溶けて体内に吸収される糸(吸収糸)」が使われます。

(厳密には、この吸収糸にもいろいろ種類があって、状況に応じて使い分けます)

 

この糸は、「表面の膣壁(上図④)」とか「もう一層深いところにある膜(上図②)」とかを縫うのに用います。

 

この吸収糸は、役目を終えたら溶けて、体内で吸収分解されます。

その頃には、前膣壁形成術を行った部分はしっかり強化され、傷は治癒しています。

 

もしここに非吸収糸を使ったら、膣壁表面に糸がずっと残ったままになります・・・

 

 

 

この吸収糸って、↑術後しばらくして膣内から「びろーん」と出てきて、患者さんが気づくことがあります。

これは役目を終えた糸なので、出てきても心配ないですよ。

 

ほっといてもいいし、自分でカットしてもいいんですけど、さすがに不安ですよね(笑)

病院に来てくれたら、私がカットします。

 

 

赤木一成

辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科