専門が異なる医者の手術技量をどうやって判断する?今週の手術は7例。

HIROMI GO 前期高齢者(65~74歳)。凄すぎ・・・

 

おはようございます。

辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科医師の赤木一成です。

 

週末なので、「一週間の骨盤臓器脱手術記録」を書きます。

患者さんを特定できないよう配慮して、数週間前の日常を描写しています。

 

手術を7例行いました。

この週は、↑子宮脱+膀胱瘤の手術を7例行いました。

みなさん大きなトラブル無く、ほぼ予定通りに退院されました。

 

骨盤臓器脱術後のトラブルで、圧倒的多数を占めるのは「便秘」です。

でも夏場は、便秘になる人は多くありません。

 

便秘が多いのは冬場です。

これから涼しくなっていくので、便秘の人が増えてくるんでしょうねえ・・・

 

専門が異なる医者の手術技量をどうやって判断してる?

この前、スタッフに嬉しいこと言われたんです。

ちょっと自慢っぽくなっちゃいますが、聞いてくださいよ・・・

 

 

わたくし、スタッフ(看護師)のAさんと一緒に、骨盤臓器脱手術をしてたんです。

 

Aさん

「先生の手術って、見てたら簡単そうに思えちゃう・・・」

 

ワタクシ

「おっ、いいこと言うねぇ… ( ̄ー ̄)ニヤリ」

 

「手術が簡単そうに見える」は、ほめ言葉。

なぜワタクシ、『( ̄ー ̄)ニヤリ』としたのでしょうか? 

それは・・・

 

「手術が簡単そうに見える」

これって、手術の世界では、ほめ言葉だとされてるからなんです。

 

手術を難しそうに行う術者って・・・

 

手術関係者の間では、よく知られてるんですけど・・・

「腕の悪い術者がやる手術は、はたから見てると、分かりにくくて難しく感じる」

「腕のいい術者がやる手術は、綺麗で分かりやすくて簡単に見える」という言葉があります。

 

だから・・・

腕の悪い術者の手術を、門外漢(他の科の医者・新人ドクター・スタッフ)が見てたら、「なんかゴチャゴチャ分かりにくくて難しそうなことやってるなあ」と感じてしまうんです。

正しい解剖が分からずにまごついたり・・・

正しい層を出せないから、剥離層が分かりにくくて出血して悪戦苦闘したり・・・

ひとつひとつの処理に手間取ったり・・・

だから素人目には、分かりにくくて難しく思えてしまうんです。

 

でも「難しい手術」なんじゃなくって、「術者が自分で手術を難しくしている」だけなんですよね。

 

手術を簡単そうに行う術者は・・・

 

いっぽう、腕の良い術者だとどうでしょう。

 

正しい解剖を熟知してるから、迷うことなく手術が進み・・・

確実に正しい層に入って安全に剥離できるから、層がはっきり分かって出血もなく・・・

ひとつひとつの処理を一発で確実に決めるから、短時間で終わる・・・

「腕の悪い医師が難渋するポイント」をあっさりクリアして、淡々と進めていくから、綺麗で分かりやすくて簡単そうに見えるんですよね。

 

とんでもない誤解

 

ここで、とんでもない誤解をしてしまう人がいるんです。

 

腕のいい術者が、「綺麗で分かりやすくて簡単そうに見える手術」を行うのを見て・・・

「手術とは簡単なものなのだな。こんな誰でもできそうなことをやっているのだから、この先生は上手い術者ではないのだろう」というふうに思っちゃうんですよね。

 

そして、↓こんなこと言っちゃったりするんです(ほんとにこんな人いました)・・・

 

新人ドクター「この手術って簡単なんですね!これなら僕にもできそう」

 

上級医「イラッ・・・」

 

お分かりのように、これってとんでもない誤解なんです。

 

決して、「簡単な手術」ではないんです。

腕の良い術者が、技術の粋を尽くした結果、「素人目には簡単そうに見えた」というだけのことです。

 

そもそも「簡単な手術」って、この世に存在しません。

どんな手術にも、ピットフォール(落とし穴)があり、上級医はいろいろ痛い目にあってきています。

 

上級医は細心の注意を払ってピットフォールを回避しつつ、手術を順調に簡単そうに進めるんですけど、当然ながら新人君にはその苦労とか技術とかは見えません。

まあ、だれでも新人のうちはそうなんですけどね・・・

 

赤木一成 辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科