見事な虹です。二重の虹だったんだけど、写真ではよくわかんないですね・・・
おはようございます。
辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科医師の赤木一成です。
週末なので、「一週間の骨盤臓器脱手術記録」を書きます。
患者さんを特定できないよう配慮して、数週間前の日常を描写しています。
子宮脱膀胱瘤の手術を7例行いました。
この週は、子宮脱+膀胱瘤の手術を7例行いました。
年がら年中、骨盤臓器脱の手術に励んでいます。
ほぼ全員が、大きなトラブル無く経過して、だいたい予定通りに退院していきます。
患者さんとは淡々とした関係になりがちだけど、これでいいんだと思っています(笑)
こちらから手術を強く勧めることはありません。
外来診察をやってると、ときどき困った事態が起こります。
今回は、その「困った事態」のお話をさせていただきます。
80代のAさんが、娘さんと一緒に、骨盤臓器脱外来を受診してきました。
Aさんは施設に入居中とのことです。
Aさんを診察したところ、↑子宮脱+直腸脱の診断でした。
診察が終わって、Aさんと娘さんに説明をおこないます。
わたくしが説明・・・
「子宮脱と直腸脱があります。どちらも自然に治ることはなく、根本的に治すには手術が必要です」
「子宮脱は保存的治療(ペッサリー)という手もありますが、直腸脱は手術しか対処法がありません」
Aさん「あたしゃ手術は嫌だよ!」
娘さん「でもお母さん、手術しないと一生このままだよ。手術やってもらおうよ・・・」
Aさん「とにかく手術は嫌じゃ」
娘さん「直腸が出てくるから、施設の人も対処に困ってるって言ってたよ。手術しようよ・・・」
Aさん「いやじゃ。帰る」
娘さん「先生、母が手術受けるように説得してもらえませんか?」
ワタクシ「私から説得することはできないんです。二人で相談して、意見を統一してきてくださいね。」
なぜ手術を受けるよう説得しないのか?
ということで、このような状況で、こちらから強く手術をすすめることはありません。
冷たいとかじゃなくって、ちゃんと理由があるんです。
本人が納得しないと、手術するわけにはいかないから。
まず、これです。
手術って、あくまでも本人が納得した上で受けていただく必要があるんです。
本人が納得してないのに(なかば強制的に)手術してしまうと、それは「傷害罪」になりかねません。
ほかの患者さんをたくさんお待たせしているから。
骨盤臓器脱外来は、いつもたくさんの患者さんが受診されます。
なるべく患者さんをお待たせしないように、いろいろ努力しています。
だから説得に使う時間があったら、次の患者さんを診察したいんですよね。
「本気で骨盤臓器脱を治したい」と思ってる患者さんを優先させたいから。
患者さんはAさんだけではありません。
手術を受けて骨盤臓器脱を治したいと願っている患者さんが、他にもたくさんいらっしゃいます。
こっちも時間割いて、手術のプレッシャーを引き受けて、頑張って手術するんです。
だから、「本気で病気を治したい」と思っている人を優先させたくなるのは、人情ですよね。
こんな状態で手術予約入れても、どうせキャンセルされるから。
最後に、これです。
若い頃のワタクシ、こんな状況のときに、説得に加担したことがあるんです。
でもこんな状態で手術予約を入れたらどうなるか。
高い確率で、後日キャンセルの電話が来るんですよね・・・
手術予約に要した労力が、無駄になってしまうんです。
こんな経験を何度かして、医師が患者さんを説得するのは、意味がないと悟ったんです。
ということでワタクシ、本人が手術を希望しない限りは、手術予約の手続きを進めることはありません。
私がこんな状況に遭遇したら、「いったん外で相談して、決まったらまた受付に声をかけてくださいね」と言うようにしてるんです。
それでも意見がまとまらなかったら、そのままお帰りいただくしかありません。
また気が変わったら、あらためて受診してくださいませ・・・
赤木一成 辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科