子宮脱と直腸脱の合併例:今週の骨盤臓器脱手術は6例でした。

↑一階受付です・・・

 

おはようございます。

辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科の赤木一成です。

 

週末なので、「一週間の骨盤臓器脱手術記録」を書きます。

 

これはリアルタイムの記録ではありません。ちょっと前の記録です。

患者さんを特定できないように、配慮しています。

 

子宮脱膀胱瘤の手術を5例行いました。

この週は、子宮脱+膀胱瘤の手術を5例行いました。

便秘の人が二人いましたが、大きなトラブルはなく、全員予定通りの退院です。

 

骨盤臓器脱術後のトラブルで、圧倒的に多いのが、この便秘です。

 

当院では骨盤臓器脱の手術を年中行っていますが、便秘の人が多いのは冬です。

冬場は水分をあんまり摂らないから、便秘になりやすいんですよね。

冬場に入院する方は、水分をしっかり摂りましょう。

 

子宮脱直腸脱合併例の手術を行いました。

 

今週は、子宮脱+直腸脱の合併例の手術を1例行いました。

大きな問題なく、だいたい予定通りに経過して退院しました。

 

↑膣から脱出する骨盤臓器脱(子宮脱・膀胱瘤・直腸瘤)の手術は、毎日のようにやってます。

2020年の記録を見返してみますと・・・

私が手がけた子宮脱膀胱瘤直腸瘤の手術は、220例ありました。

(腹腔鏡手術も合わせると、当院全体で300例くらいになります)

 

 

そして、↑肛門から脱出する骨盤臓器脱(直腸脱)の手術も、日常的にやってます。

2020年に私が手がけた直腸脱手術は、44例でした。

(腹腔鏡手術等を合わせると、当院全体で100例くらいになります)

 

当院全体では、「膣から脱出する骨盤臓器脱」と「肛門から脱出する骨盤臓器脱」を合わせると、年間400件くらいになります。

 

 

そして、↑この両者が合併する手術もあります。

膣(子宮脱膀胱瘤)と肛門(直腸脱)から脱出してくるタイプの骨盤臓器脱です。

 

このタイプの骨盤臓器脱って、そんなに多くは無いけど、一定の頻度で遭遇します。

2020年では、わたくし12例の手術を行っていました。

 

子宮脱膀胱瘤の手術を日常的に行っている病院は、全国で100施設以上あると思います。

そして直腸脱手術を手掛ける病院も、全国で100施設くらいあるでしょう。

ただし、この両者の手術を日常的に行っている病院は、全国にもほとんどありません。

 

子宮脱直腸脱合併例:辻仲病院の進化

子宮脱と直腸脱を合併するケースって、手術に手間がかかります。

そして、やってる病院も、ほとんどありません。

 

われわれも、参考事例がほぼ無いなかで、試行錯誤を続けてきました。

 

初期:直腸脱しか対応できなかった

 

当院はもともと大腸肛門科の専門病院でした。

だから以前は直腸脱しか対応できず、子宮脱は他院に紹介していました。

でもすべての患者さんから「ここでぜんぶ治してほしい」と言われ続けたため、子宮脱膀胱瘤の診療をスタートしたという経緯があります。

 

中期:直腸脱手術を先にやって、直腸脱が治ったら子宮脱手術。

2010年に骨盤臓器脱専門診療を開始し、子宮脱膀胱瘤手術に本腰を入れることにしました。

これにより、直腸脱も子宮脱も、当院で対応できるようになりました。

 

始めた頃には、まず直腸脱手術を行って、直腸脱が治癒してから子宮脱膀胱瘤手術を行っていました。

技術がまだ十分に確立されていなかったから、安全確実を重視して、別々に手術を行っていたんです。

 

ただこれだと、患者さんが二回手術を受ける必要があるんですよね。

でも患者さんは、ほぼ全員が、「同時に両方治してほしい」と希望されるんです。

 

現在:直腸脱と子宮脱、同時に手術するようになった。

現在では技術が確立されて、両方の手術を同時に行うようになりました。

直腸脱の手術に1時間ちょっと、子宮脱膀胱瘤の手術に1時間ちょっと、合わせて2時間~2時間半くらいで終わります。

 

このような場合には、腹腔鏡手術で、子宮と直腸を同時に吊り上げる方法もあります。

ただし腹腔鏡手術は、手術の侵襲(ダメージ)が大きくなりがちなので、高齢者に行うのは敷居が高いです。

「子宮脱+直腸脱」の患者さんって、全身状態が悪化している80代の人が多いんです。

だから腹腔鏡手術は、限られたケース(重度の直腸脱など)に限定して行っています。

 

子宮脱膀胱瘤より、直腸脱の方が苦労することが多いんです。

子宮脱膀胱瘤の手術は、術後もまず問題は起こりません。

重症例であっても、再発することはまずありません。

 

いっぽう直腸脱手術は、術後に苦労することがあります。

直腸粘膜は血流が豊富で、便の刺激も受けるから、ときどき出血する人がいるんです。

しかも重度の直腸脱だと、再発する可能性もあります。

 

いろんな点で、直腸脱の方が苦労することが多いんですよね。

 

この「子宮脱+直腸脱」のケースって、最近いろいろな医療機関から紹介されてくるようになっています。

他にやってる医師もほとんどいないので、私のライフワークのひとつと言えるでしょう。

 

赤木一成 辻仲病院柏の葉 骨盤臓器脱外科