おはようございます。
辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科医師の赤木一成です。
週末なので、「一週間の骨盤臓器脱手術記録」を書きます。
患者さんを特定できないよう配慮して、数週間前の日常を描写しています。
手術を7例行いました。
この週は、子宮脱膀胱瘤の手術を4例行いました。
すべて70代の方です。
また、マンチェスター手術を3例行いました。
こっちはすべて、40代の若い方でした。
このマンチェスター手術、夏に行うことが多いんです。
この手術を受けるのは、大半が40代の若い人だからです。
みなさん子育て中ですから、子供が夏休みの期間に合わせて手術を受けるわけですね。
※過去のマンチェスター手術の記事は、↓こちらをご覧ください・・・
性生活のある若い人におススメ:マンチェスター手術
当院では、骨盤臓器脱手術(子宮脱・膀胱瘤・直腸瘤)を、年間300件以上行っています。
(直腸脱も合わせたら、年間400件を超えます)
骨盤臓器脱手術を受ける方の大多数は(全体の95%くらい)、性生活を卒業しています。
ほとんどの方が60代後半~80代なんだから、まあそうなりますよね。
性生活を重視するのは、やっぱり若い人が中心となります。
数は少ないけど、40代~50代前半の方ですね。
若い人の骨盤臓器脱は、↑このように子宮頸部が「こん棒」のように伸びているタイプが大多数を占めます。
このようなタイプは、マンチェスター手術が向いています。
↑膀胱瘤や直腸瘤がメインの骨盤臓器脱には、このマンチェスター手術は向きません。
以下、マンチェスター手術の長所と短所について、解説いたします。
長所①:性交障害を生じるリスクが低い。
↑通常の経腟手術では、前後膣壁に「縦方向の傷」ができます。
だからこの傷が、性交障害(性交時の痛みや違和感)の原因となるんです。
一方、↑マンチェスター手術の場合には・・・
うまく工夫してやれば、この「縦方向の傷」を作らずに治すことが可能です。
↑断面図で言えば、前後膣壁(青いところ)を手つかずで治せるわけです。
だから、性交障害を生じる可能性が低いんです。
いまのところ、これまで私が手がけた約40例のマンチェスター手術で、性交障害の苦情をいただいたことはありません(ほぼ全員が性生活のある若い方です)
今後も可能性ゼロとは言い切れないですけど、「性交障害を生じる可能性は低い」と考えていいでしょう。
長所②:メッシュ(異物)を使わずに治せる。
若い人の骨盤臓器脱手術には、腹腔鏡下仙骨膣固定術を行うのが一般的です。
この手術、↑体内にメッシュを埋め込む必要があります(青いラインがメッシュ)
↑メッシュって、「プラスチック繊維を編み込んで作ったシート」のことです。
でも40代の人は、「メッシュを入れたくない」とおっしゃる方が多いんですよね。
「まだまだ長く生きるのに、体内に異物を入れて大丈夫なの?」と思うわけです。
一方マンチェスター手術では、メッシュを使わずに、骨盤臓器脱を治すことができます。
短所もあります・・・
このマンチェスター手術、「前後膣壁に手を付けずに治せる」のが強みです。
その反面、「この部分の補強を、ガッチリ行うことができない」という弱みを伴います(↑上図の点線のところ)
術後何年かしてから、膀胱瘤や直腸瘤が出てくる可能性があるということですね。
これまでに私が手がけたマンチェスター手術では、膀胱瘤の再発が1例ありました。
ただ本人はとくに支障を感じておらず、「年取ってからどうするか考えます」とのことで、経過観察中です。
赤木一成
辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科