みんな大好き、強くてかわいいおすもうさん。(画像引用)
おはようございます。
辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科医師の赤木一成です。
週末なので、「一週間の骨盤臓器脱手術記録」を書きます。
患者さんを特定できないよう配慮して、数週間前の日常を描写しています。
手術を7例行いました。
この週は、子宮脱+膀胱瘤の手術を7例行いました。
うち6例は、手術も難なくクリアして、術後も順調に経過して退院されました。
ここまでは良かったんですけど、残りの1例が大変でした。
なにが大変だったかといいますと、「かなり太ってる人」の手術だったんです。
かなり太ってる人の手術
↑こちらは、子宮脱膀胱瘤手術を受ける予定のAさんです。
身長は150㎝くらいなんだけど、体重が75㎏以上あります。
通常の骨盤臓器脱では、子宮膀胱が柔らかい感じで脱出してきます。
押し込んだら、スルッと容易に膣内に戻すことができます。
いっぽうAさんの骨盤臓器脱は、大きくパンパンに飛び出しています。
今にもはちきれて中身が飛び出してきそうです・・・
押し込んでも抵抗が強くて、すぐに「バィーン」と元に戻ってしまいます。
肥満のために腹圧が高くって、こんな状態になっているのでしょう。
手術は難しかった・・・
さてさて手術です。
まず大変だったのが、子宮を持ち上げて靭帯に固定する操作です。
この手術では、↑子宮を持ち上げて靭帯に固定します(赤矢印)
Aさんはいつもより糸を多くして、↑子宮を強く持ち上げて、靭帯にガッチリ固定しました。
術後は痛いでしょうね・・・
でも手加減して再発したら、もっと困るでしょうから、ここは容赦しませんよ(笑)
次に大変だったのが、最後の膣壁を縫う所です。
ほとんどのケースでは、↑傷は普通に縫えて、縫ったところはぴったりくっついて治っていきます。
でもAさんの場合には、↑縫った傷がぱっつんぱっつんになっています。
↑太った人がきついシャツを着てるような感じです。
ということで、傷が開かないように、いつもより念入りに縫っていきました。
そんなこんなで悪戦苦闘して、なんとか手術を完遂できました。
ホッとしました(笑)
が、これで終わりじゃなかったんです・・・
術後も大変だった・・・(汗)
Aさん、太りすぎてるから、もともと歩くのが大変そうでした。
さらに傷の痛みが加わるから、もっと歩くのがつらくなってしまいました。
このまま寝たきりになられたら困るので、リハビリの人に介入してもらって、歩行訓練をスタートしました。
そして、術後にじわじわ出血が続いていました。
だれでも少量の出血はあるんですけど、通常より赤みが強い出血です。
診察室で診察してみたところ・・・
ぱっつんぱっつんの傷が開いて、そこから出血してたんですね・・・(あーあ)
Aさん体が重いから、「どっすん」と座ってたみたいなので、その時に裂けたんじゃないかと思ってます。
ワタクシこれまでに、約2000件の骨盤臓器脱手術を手がけてきましたが、これは初めてのケースでした。
まあ、傷が開いてしまった以上は仕方ありません。
肉が盛り上がってふさがるのを待つしかありませんね(二次治癒といいます)
退院を延期して、傷が落ち着くのを待っていたところ、徐々に回復して出血がおさまって退院となりました。
記憶する限り・・・
ワタクシの今年の骨盤臓器脱手術で、退院が大幅延期となったのは、このAさん一人だけだったはずです。
完封を逃して残念でしたが(笑)、まあ仕方ないですね。
ということで、結論です。
太ってるのは、手術するときに、なにひとついいことがありません。
手術予約を入れてから入院まで、しばらく時間があるから、頑張ってダイエットしましょうね。
これまで何度も言ってきてますが、まあそういうことで・・・
赤木一成
辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科