おはようございます。
辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科の赤木一成です。
今日はマニアックなネタです。
「経腟手術と経肛門手術:どこが違って、どっちが難しい? ①手術編」 というお話をさせていただきます。
外科系の医者しか読んでくれなさそうなテーマですが、ネタを思いつかなかったもので・・・
よろしければお付き合いください。
わたくしこれまでに、「膣側の手術(経腟手術)」と「肛門側の手術(経肛門手術)」、どちらもたくさん手がけてきました。
直腸脱や痔核といった経肛門手術は、術者として5000件以上を経験しています(証拠)
また、子宮脱や膀胱瘤の手術、つまり経腟手術は、術者として1400件ほど手がけています。
どちらも1000件以上の手術を手がけてきているわけで、これってたぶん全国でも私くらいしかいないんじゃないかと思います。
だから経膣手術と経肛門手術の違いについて私が語っても、そんなに文句は来ないんじゃないかと・・・
では僭越ながら、行かせていただきます。
参入敷居の高さ:私には経腟手術の方が敷居が高いと思えた。
↑子宮脱や膀胱瘤の手術って、直腸や膀胱スレスレのところを剥離して、深ーいところまで到達します。
そしてその深ーいところにある靭帯を、↑ニードルという器具で穿刺して、先端の糸を拾います。
上級者は、ニードル先端が見えない状態で、指先の感覚だけでこの操作をやるんです。
見えないところの操作だし、まれに深いところから出血することがあります。
最初見たときは、とっても敷居が高く感じたものです(いまでは当たり前のようにやってますが)
いっぽう↑経肛門手術は、直接見えるところの手術です。
上級者はうまく視野を出して、やりやすい状態で行うので、初心者は「これなら自分にもできそう」なんて思っちゃうんですよね・・・
(そして実際やってみて、難しさを思い知らされるわけなんですけれども)
手術を学んだり教えたりする:これも経腟手術が難しいと思う。
経腟手術って、指先の感覚頼りのところが大きいです。
触ってみて「ここが仙棘靭帯」とか「ここを穿刺する」とか、見えないところを指先の感覚で特定する必要があるんです。
これって、ビデオとかを見て学ぶのは不可能であります。
術中のプレッシャー:明らかに経腟手術が上。
骨盤臓器脱の手術では、直腸や膀胱スレスレのところをはがしていくので、ここの操作は緊張します。
そしてもし出血したら、深くて見えないところから出血してくることがあるんです。
輸血を要するような大量出血はまず無いんですけど、当時初心者の私にとって、術中プレッシャーは骨盤臓器脱手術の方が上でした。
いっぽう痔核とかの肛門手術だと、手術操作は手前の見えやすい場所で行います。
術中に止血するのは容易だし、臓器を損傷する心配もありません。
②術後編へ続きます・・・
赤木一成 辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科