骨盤臓器脱手術でたまに遭遇するトラブル:臓器損傷のおはなし。

 

おはようございます。

辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科医師の、赤木一成です。

 

今回は、「臓器損傷」について、お話させていただきます。

よろしければ、お付き合いください。

 

 

臓器損傷って何?

 

「臓器損傷」って、手術の際に、↑周囲の臓器を傷つける合併症のことを言います。

骨盤臓器脱手術を行う際には、近くに膀胱・直腸・尿管がありまして、これを傷つける可能性があるわけですね。

 

この合併症、骨盤臓器脱手術を数百例数千例と手がけてきた医師であれば、何度も経験してきてるはずです。

 

「出血」と並んで、術中に警戒すべき二大合併症であります。

 

どれくらいの頻度で起こるの?

ワタクシが手がける骨盤臓器脱手術(子宮脱・膀胱瘤・直腸瘤・膣脱)では・・・

臓器損傷はここ2年半・700例くらい起こっていません。

(もちろん将来的に絶対起こらないとは言えないけれど)

 

 

この臓器損傷、初期には100例~200例に1例くらいの頻度で、発生してました。

 

最近なぜ発生頻度が減ったかと言いますと・・・

「安全な剥離層(はがす層)を認識して、正確に剥離できるようになったこと」

に尽きると思います。

 

安全な剥離層とは

 

↑膀胱壁も直腸壁も、複数の層に分かれた複雑な構造をしています。

剥離を行う際には、これらすべての層を正しく認識し、それを正確に剥離する技術が必要です。

 

もちろん、トレーニングを積んでない初心者にできる事ではありません。

容易な症例で正しい層を剥離するのなら、手順を教えて一定期間修練積めば、そこそこできるだろうけど・・・

困難症例まで含めたあらゆるケースに対応できるようになるには、相応の経験を要します。

 

ある段階に到達して気づいた、面白いこと

 

「正しい層の認識」ができるようになった段階で、他の術者の手術を見てると、面白いことに気付きます。

 

youtubeとかで、世界各国の骨盤臓器脱手術動画を見てたら・・・

「この人、正しい層を分かって剥離してる」みたいなことを、気づくようになるんですよね。

 

逆に、「これ剥離層わかってないやろ」みたいな動画も、たびたび遭遇します。

たぶんこういう術者って、表には出てないけど、ときどき臓器損傷を起こしてるんじゃないかと思います(失礼)

 

 

これって先進国の有名病院のほうが、「分かってる」が多いんだろうと思ってたけど・・・

実際にはそうでもなくって、「わかってないやろ」にたびたび遭遇します。

(偉そうに語ってしまってゴメンナサイ。あくまでも私の感想です)

 

 

 

逆に中進国とかから出てる動画に、「分かってる」がけっこう見つかるんですよね。

 

 

 

たぶん手術の技量って・・・

「先進国」とか「有名病院」とかの要素より、「術者個人のセンス」に強く依存するんじゃないかなーと、感じた次第です(まあ努力とか経験数とかは当然として)

 

 

赤木一成

辻仲病院柏の葉 骨盤臓器脱外科