直腸脱は痔核とまぎらわしいので、誤診しないよう注意しています。

おはようございます。辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科の赤木一成です。

当院は年間100例の直腸脱手術を行っております。

 

痔核の手術をするつもりで、いざ麻酔をかけたら、直腸脱だった・・・

これって、肛門外科を長年続けてきた医師であれば、だれでも経験あるんじゃないでしょうか。

(私もむかし1例経験あります)

 

その病院が、デロルメ法とかの直腸脱手術に対応できるのであれば、そのまま直腸脱手術に移行すればいいんですけど・・・

直腸脱手術ができない病院だったら、手術を中止して、直腸脱手術ができる病院に紹介することになるんです。

 

手術のために予定をあけて、麻酔の注射までされたのに、「手術できない」なんて言われたら、そりゃ患者さん怒りますよね。

だから、直腸脱と痔核の診断を正しくつけて、間違えないようにするのは大事なんです。

 

ベテラン医師だと、直腸脱の雰囲気を察知して、正しく診断に導けます。

外来診察時には、患者さんはベッドに横になってもらいます。

「肛門から脱出する」という訴えがあるのに、診察時に脱出がよくわからなかったら要注意です。

 

ここでベテランの大腸肛門外科医であれば、あやしい雰囲気をかぎ取って、正しい診断に導けるんです。

直腸脱の患者さんって、肛門の締まりがゆるいことが多いんです。

「むむっ!? これ直腸脱ではないか?」と疑えるわけですね。

 

初心者ドクターの典型的失敗パターン

いっぽう、初心者ドクターの典型的失敗パターンはこれです。

「うーん脱出してるのよくわからないなあ。たぶん痔核かなあ。まあ本人が脱出するって言うし、手術希望してるんだから、痔核手術の予約入れとくか」

ここで手術予約に持って行っちゃダメです。

 

じゃあどうすればいいの?

まず、吸角という器具を使って、脱出を再現してみます。

荒川製作所様のカタログより引用

肛門にカップを当てて、掃除機みたいに吸引するんです。

これで直腸脱や痔核の脱出が再現できます。

ベッドで寝かせたままできるので便利です。

 

そしてこれで脱出が再現できなければ、これ以上無理して吸引してはいけません(痛いです)

こんどは和式トイレでしゃがんでもらって、いきむところを撮影する必要があります。

(女性スタッフが一人だけトイレに入って撮影するので、恥ずかしくないですよ)

 

ここまでやってはじめて直腸脱の診断がつくケースもあるので、脱出がはっきりしないと思っても、手を抜いちゃいけません。

 

赤木一成 辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科