わたし、子宮脱の手術を受ける予定です。
ペッサリー(リング)が入ってるんですけど、これは手術まで入れておいていいの? それとも前もってはずしておいたほうがいい? |
こんな疑問に答えます。
わたくしが手掛けている年間200例の子宮脱膀胱瘤手術のうち、3~4割くらいの患者さんが、ペッサリーを使用しています。
当院では、入院一か月前に術前検査を行うのですが、このときにペッサリーを外すようお勧めしています。
その理由についてお話ししますね。
子宮脱手術の一か月前には、ペッサリーを外しておいた方が無難です。
ペッサリーを手術ぎりぎりまで留置しておくと、どんなデメリットがあるのでしょうか?
癒着が起こって手術の危険が増す
ペッサリーを長期間留置しておくと、膣壁に炎症が生じ、癒着が起こります。
ペッサリーを手術一か月前に外しておけば、手術するころには炎症がとれて、問題なく手術をおこなえます。
いっぽうペッサリーを手術当日まで入れておくと、手術のときに出血しやすくなります。
また私は経験していませんが、臓器損傷のリスクも増えるとされています。
手術がやりにくい
骨盤臓器脱の手術では、子宮がある程度下がっていないと、手術がやりづらくなります。
ペッサリーを手術ぎりぎりまで留置していると、子宮が奥の方に引っ込んでしまっており、手術がやりづらいことがあるんです。
とはいえ、手術までペッサリーを入れておいても、いつも通りの手術はできています。
ペッサリーは手術1か月前に外す方針なんですけれども、それでも「ペッサリー無しで1か月も過ごすのは耐えられない(泣)」という患者さんもおられます。
このような場合には仕方ないので、「手術までペッサリー入れてていいですよ」と言っています。
たしかに手術はやりにくくなるのですが、大量出血とか臓器損傷とかのトラブルは、今のところ起こらずにできています(ほんとは外してほしいんだけど)
ただし、術後に膣粘膜の癒着が生じやすくなります。
↑これ、辻仲病院の患者さん用浴室です。それはさておき・・・
ペッサリーを手術ぎりぎりまで留置していると、膣粘膜に炎症が起こるため、術後に膣粘膜が癒着しやすくなります。
癒着してくっついたまま放置しておくと、そのままはがれなくなって、膣が変形してしまいます。
術後一か月以内であれば、くっついているところを指ではがすことができますが、はがすときに出血が生じるので、できれば避けたいものです。
赤木一成 辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科