骨盤臓器脱の手術で「難しそうな人」って、手術する前から分かっているんです。

 

医師「今日の手術は難しそうだ・・・」

看護師「なんで難しそうってわかるんですか?」

オペ室の看護師さんの、こんな疑問に答えます。

 

 

おはようございます。

辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科の赤木一成です。

 

毎日のように骨盤臓器脱(子宮脱・膀胱瘤直腸瘤など)の手術を行っていますが、ときに「これは難しそうだ・・・」という症例があるんです。

今回は、この「難しい症例」についてお話いたします。

 

骨盤臓器脱手術で難しそうなのは、まず「ペッサリーを使っている人」です。

fullcircle physiotherapyのサイトより引用

 

子宮脱や膀胱瘤でペッサリーが留置されていると、膣壁に炎症が生じて、癒着が起こることがあります。

だから原則として、手術1か月前には、このペッサリーを外してもらいます。

そうすれば手術する頃には、炎症が取れて、ほとんど問題なく手術できるんです。

 

でもときどき、「ペッサリー無しで1か月過ごすなんて耐えられない・・・(泣)」という方がいるんですね。

このような場合はしょうがないので、手術までペッサリーを入れておくこともあります。

 

もうひとつ、ときに苦労するのは「子宮を取ってる人」です。

過去に「子宮脱手術」や「子宮筋腫手術」で、子宮を取っている人がいます。

子宮が無くって脱出してくる状態を、「膣脱」といいます。

 

過去に手術を受けると、そこに癒着が生じます。

だから膣脱の手術では、癒着していることがよくあります。

 

それでも安全にやります。お任せください。

そしてときに、この二つが組み合わさっているケースもあります。

「子宮が無くって、しかも手術日までペッサリーが入っている」という状況ですね。

これはもっとも注意を要するパターンです。

 

とくに注意を要するのが、「膀胱を剥離するステップ」です。

 

膣粘膜と膀胱壁の間って、こんな風に複雑な層に分かれています。

大半のケースでは、これらの層をきれいに剥離する(=はがす)ことができるんです。

 

でもここが癒着していると、剥離するのが難しくなります。

正しい層を確認しつつ、膀胱を損傷しないように、慎重に操作を行っていきます。

 

これまで1300人を超える骨盤臓器脱手術を手がけてきましたが、この「癒着しているケース」もたくさん経験してきました。

いまでは技術が洗練されて、「多量の出血で輸血」とか「大きく臓器を損傷して再手術」というケースは、まず起こらなくなったと言えます。

 

癒着してても安全にやります。お任せください。

 

赤木一成 辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科