骨盤臓器脱外科医師の赤木一成です。
今回のテーマは、骨盤臓器脱手術にまつわる「出血」です。
「術前」「術中」「術後」の三つに分けて、お話させていただこうかと。
目次
術前の出血:こすれて出血する
まず、「術前に遭遇する出血」について。
これは、↑長期間放置して重症化した子宮脱の先端が、下着とこすれて出血するパターンです。
このパターンの出血は、手術で子宮が正常位置に戻ったら解決します。
手術までしばらく待つ場合には、「膣粘膜を保護する軟膏」を処方することもあります。
「癌」がないことを確認しておく必要がある
子宮脱の患者さんが「出血する」と訴える場合、われわれは必ず「癌」の可能性も念頭に置きます。
この場合、必ず子宮細胞診を行って、癌がない事を確認しておく必要があります。
術中の出血は2パターン
つぎは、「術中に遭遇する出血」です。
二つの出血パターンがあります。
①剥離時の出血:ペッサリー使ってた人に起こりやすい
術中に、↑剥離(はくり:はがすこと)するステップがあります。
このとき、出血しやすい人がいるんですよね。
はがすたびにジワジワ出血して、いちいち止血が必要だから手間がかかります・・・
これって、ペッサリー長期使用者で、ときどき見られる出血パターンです。
②穿刺時の出血:数百人中1人の割合で起こる
もうひとつ、手術の中盤で、↑「穿刺(せんし)」というステップがあります。
ニードル(写真の器具)で靭帯を貫通させて、糸を通す作業のことです。
穿刺するときには、血管の少ない安全な場所を狙うんですけど、それでもたまーに出血することがあるんです。
穿刺時に出血した場合、対処法はパターン化されているので、手順に迷うことはありません。
スタッフも手慣れているので、止血操作に必要な道具がすぐに揃って、止血操作に移ることができます。
術後の出血は、入院中と退院後の2種類
術後の出血には、入院中(手術翌日)と退院後(術後2~3週間)の、二通りの出血パターンがあります。
手術翌日ガーゼを抜いたら出血することがある
手術終了時に、ガーゼを膣内に留置します。
手術部位を一晩圧迫することで、出血・血腫を予防するわけです。
この止血ガーゼは、手術翌朝の回診時に抜きます。
この時たまーに、ガーゼがはがれた際の刺激で、出血する人がいます。
頻度としては、100人中1人くらいですかね。
↑骨盤臓器脱術後の出血は、痔核の術後出血と違って、ジワジワ出血してくるケースが大半です。
だからあわてる必要はありません。
ベッドサイドで止血を行えばOKです。入院期間も予定通りで大丈夫です。
退院後の出血は、2か月くらい続いても問題ない
骨盤臓器脱術後の傷は、治癒するまで2か月くらいかかります。
だからその間は、ナプキンに少しずつ血が付いても問題ありません。
たまーに、抗血栓薬(血液サラサラの薬)を飲んでる人で、濃い目の出血が続く人がいますね。
この場合には止血操作が必要ですが、いずれ必ず出血は止まります。
輸血が必要となるほどの多量出血は、まず起こらない
以上です。
手術ですから、出血に遭遇する可能性は0ではないということですね。
ただし、いずれの出血パターンであっても、対処手順は確立されています。
輸血が必要となるほどの多量出血は、まず起こりません。
可能性は500人中1人とか、その程度と思っていただければいいでしょう。
赤木一成 骨盤臓器脱外科医師