トラブルの発生確率:術直後および中長期編。今週の手術は8例

病院ロビー改装して豪華になりました(すいません嘘です)

 

おはようございます。

辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科医師の赤木一成です。

 

週末なので、「一週間の骨盤臓器脱手術記録」を書きます。

患者さんを特定できないよう配慮して、数週間前の日常を描写しています。

 

手術を8例行いました。

この週は、子宮脱+膀胱瘤の手術を7例行いました。

 

さらにもう一件、腰椎麻酔(下半身麻酔)でできる小手術を行いました。

 

手術自体のトラブルは、例によってありませんでした。

術後に便秘になる人は、時々いるんですけどね。

 

 

・・・ということで今回は、前回(手術中に起こりうるトラブル)に引き続き、「術後に起こりうるトラブル」の話をさせていただきます。

 

術直後(手術を受けて退院するまでの間)のトラブルと、

中長期(術後数か月~数年)のトラブルに分けて解説いたします。

 

術直後(術後数日間)のトラブル

術後出血:ほぼ克服

 

骨盤臓器脱の経腟手術では、術後出血はめったに起こりません。

 

たまにあるのが、手術翌日に止血ガーゼを抜いたあとに、こすれて出血するケースですね。

この場合ベッドサイドで止血を行えばOKです。麻酔も不要で短時間でできます。

 

一時的な排尿異常:一定割合で起こる

 

術後4日間は、おしっこの管(バルーンカテーテル)を留置して、膀胱を休めます。

この管を抜いた後に、しばらく排尿が落ち着かない人がいます。

↑手術で膀胱が刺激を受けて、こうなるわけですね。

 

軽度の排尿異常は、全体の1割くらいの方に起こります。これはいずれ落ち着いてきます。

 

年に数名ほど、バルーンカテーテルを抜いたあとに「尿が出にくい・なかなか出ない」という人がいます。

もともと「排尿障害を起こす薬」(過活動膀胱の薬、精神疾患の薬、消化管の蠕動を押さえる薬など)を飲んでることが多いですね。

この場合、これらのお薬をしばらく止めて、バルーンカテーテルの留置期間を少し延長すれば、徐々に回復してきます。

 

痛み:誰でも多少の痛みがあるが、必ず消失する。

 

これは個人差が大きいです。

まったく同じ手術を行っても、全然平気な人もいるし、痛がる人もいます。

 

術後の痛みは、痛み止めで対処可能です。

退院する頃にはほとんど軽快して、しばらくしたら全員消失します。

 

便秘:しばらく便秘になる人は多い

 

術後トラブルの中で、圧倒的多数を占めるのが、この便秘です。

環境が変わって、寝ている時間が増えるので、術後は誰でも便秘気味になります。

 

全員にあらかじめ下剤を処方していますが、それでも便秘になる人がいますね。

まあ便秘しても、下剤を増やせば必ず解決するんですけどね。

 

・・・ということで、以上のように色々なトラブルがありますが、重大なトラブルはまず起こらず、98~99%の方はだいたい予定通りに退院できています。

 

中長期(術後数か月~数年)のトラブル

再発:ほぼ克服

 

手術のやり方は、時代とともに少しずつ進化していきます。

 

現在のやり方に落ち着いて、3年近く経過しました。

 

この期間の再発率は、1%くらいです。

長期的にはもう少し増えてきて、2%近くになるかもしれません。

 

今のところ98~99%の方は、一回の手術で治っているということです。

「再発はほとんどありません」と言っても、差し支えないでしょう。

 

メッシュ露出・感染:ほぼ克服

 

当院では近年、ほぼすべて(約99%)の骨盤臓器脱に対しメッシュを使わない手術を行うようになっています。

 

よってメッシュ関連トラブル(露出・感染)も、最近ほとんど見かけなくなりました。

 

性交障害:問題になったことはない

 

性生活を重視する人には、最初から腹腔鏡手術をおすすめしているので、性交障害で苦情をいただいたことはありません。

 

まとめです・・・

 

ということでまとめますと、↑このようになります。

人体相手の仕事だから、100%はあり得ないけれど・・・

12項目中9項目は、ほぼ克服できたと考えています。

 

残る課題は、「一時的排尿異常」「痛み」「便秘」の三つですね。

これらも時間とともに解決してくるので、ご容赦いただけたらと・・・

 

赤木一成 辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科