おはようございます。
辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科の赤木一成です。
今日は、「手術中の確認作業」のお話をさせていただきます。
手術の時には、剥離(はくり:はがすこと)したり縫ったりという操作があります。
骨盤臓器脱の手術では、膀胱や直腸ギリギリのところを操作します。
だから、膀胱や直腸が損傷してないか、確認する作業を欠かさず行っています。
例をあげて解説してみます。
膀胱瘤の手術中:注射液を打った後の確認作業。
まず一例として、膀胱瘤手術の作業について示してみます。
最初に、↑注射液(「ボスミン生食」といいます)を打つ作業を行います。
膀胱瘤の壁って、↑こんな風に、複雑な層に分かれています。
そして、正しい層(疎なスペース)に、注射液を正確に注入しなければいけません。
注射液が「正しい層に入った時」「深すぎる時」「浅すぎる時」、いずれも見た目が違います。
注射液が間違った層に入ったまま、切開や剥離を進めると、うまく剥離ができません。
最悪の場合、膀胱を損傷します。
だから、「正しい層に入った時」の見た目を心得ておいて、きちんとそうなるのを確認してから、切開剥離の作業に移らないといけません。
膣壁を膀胱から剥離して、靭帯に到達した後の確認作業。
次に、↑膣壁を膀胱から剥離して、靭帯に到達する作業について。
ここは目に見えない領域の作業が含まれています(ブラインド操作といいます)。
指先の感覚を頼りに、正しい層を剥離して、靭帯に到達しなければいけません。
膀胱ギリギリをはがしていくので、緊張を要する操作です。
そして剥離や縫合などの操作が完了したら、膀胱鏡を行って、膀胱が傷ついてないことを確認しています。
このとき同時に、膀胱癌が無いことも、確認しています。
直腸瘤の手術中:膣壁を直腸から剥離した後の確認作業。
さいごに、直腸瘤の手術について。
↑これは、膣壁を直腸から剥離していく作業です(上図の左)
直腸壁ぎりぎりをはがすので、これもやっぱり緊張を伴います。
剥離や縫合などの操作が終わったら、肛門から直腸に指を挿入して、直腸が損傷していないことを確認します(上図の右)
これを「直腸指診」といいます。
骨盤臓器脱手術を1400例経験した今でも、確認作業は欠かさず行っています。
注射液の注入層の確認も、膀胱鏡も、直腸指診も、わたくし全症例で欠かさず行ってます。
技術が進化して、いまでは膀胱や直腸を損傷する可能性は、限りなく0に近づいてきています。
だから今では、これらの作業を省略しても、問題ないのかもしれません(実際、ベテラン術者ではやってない人もいます)
それでも過去に膀胱損傷や直腸損傷を経験して、その時の記憶が心に刻み付けられてるので、作業を欠かす気になれないんですよね。
小心者のような気もするけれど、これでいいんだと思っています。
赤木一成 辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科