骨盤臓器脱外科医師の赤木一成です。
今回は、「骨盤臓器脱手術を受けて、再発しやすいのはどんな人?」というお話を、させていただきます。
目次
どんな人が再発しやすいの?
「骨盤臓器脱手術後の再発率はどれくらい?」
「どんな人が再発しやすいの?」
骨盤臓器脱手術を考えている方であれば、誰もが気になるテーマでしょう。
ちょっと掘り下げてみましょうか。
当院が骨盤臓器脱手術をスタートしたのは、2010年です。
それから何年もの時間をかけて、術式は少しずつ進化し続けてきました。
↑現在のやり方に落ち着いたのは2019年ですが、それから今までの間に、ワタクシ約900例の骨盤臓器脱手術を手がけてきました。
このうち再発して再手術を行った症例は、7例です。
再発率は、現時点で約0.8%ということになりますね。
今後たまに出てくるであろう再発を加味すると、長期的な再発率は1%程度に落ち着くと予想しています。
ということで、この再発7例の手術記録を、見返してみました。
そうしたら・・・
再発した人って、二つのタイプに分けられました。
再発しやすい人①:直腸脱を伴う骨盤臓器脱
まず、↑これです。
再発7例のうち4例が、このタイプでした。
この「骨盤臓器脱+直腸脱」って、高齢(80代)のやせた女性に多く発生します。
↑骨盤底筋が非常に弱くなってて、骨盤臓器脱と直腸脱の両方が脱出してくるわけです。
そのために、手術しても支持力が足りなくて、再発することがあるわけですね。
再発しやすい人②:重度の骨盤臓器脱
もうひとつは、重症の骨盤臓器脱(上図右端)です。
再発症例7例のうち3例が、このタイプでした。
子宮が完全に脱出しており、↑大型マンゴーみたいになってます。
この重症タイプは、肥満の方に多くみられます。
太ってるせいで腹圧が高くなっており、重症化しやすくなっているわけですね。
(腹圧が高いから、術後の尿失禁も発生しやすい)
上記二つの要因が無ければ、再発リスクは低いと言えます
再発しにくいタイプは、上記の逆です。
↑それほど重症化してなくて、直腸脱も伴ってないタイプ。
このような「標準的」なタイプの骨盤臓器脱であれば、まず術後再発は無いと考えていいでしょう。
再発リスクを下げるために、できることがあります
「じゃあどうすればいいの?」ということになりますね。
- 骨盤臓器脱になったら、重症化するまでほっとかずに、余裕をもって病院を受診しましょう。
- 肥満の方は、ダイエットしましょう。
- 骨盤底筋が弱くならないように、運動しましょう。
まあ、皆様が予想されてた通りの結論ということで(笑)
再発は、ほとんど術後4か月以内に明らかとなってくる
↑これは、退院後の受診スケジュールです。
「1回目の受診」が退院3週間後、
「2回目の受診」がその3か月後(=術後4か月くらい)ですけど・・・
近年の再発症例って、この「2回目の受診」までに、明らかとなってるケースばっかりなんですよね。
術後1年以上たってからの再発って、経験してないような気がします。
いちおう、裏付けをとってみましょう。
手元にあるデータで、簡単に調べてみました。
2019年~2023年のデータになりますが・・・
この間に、私が手がけた骨盤臓器脱手術は900例で、再発して再手術を行ったのは7例です。
(最近はこれよりもっと再発少なくなっている)
そしてこの7例は・・・
すべて退院後「2回目の受診(術後だいたい4か月後)」までに、再発が確定していました。
それより後(1年後とか2年後とか)になって、あらたに再発してきたケースは、いまのところありません。
(もちろん、今後も絶対ないとは言えませんけどね)
と、いうことで・・・
退院後2回目(=術後4か月)の受診で問題なければ、その後に再発してくる可能性はほぼ無い。
骨盤臓器脱術後の再発時期に関しては、こう考えていいと思います。
再発した場合に、私がいつもやってること
自分が手術した患者さんが再発した場合(100人中1人とかその程度ですが・・・)、いつもやることは決まっています。
前回手術の各種記録をチェックして、
再手術を行う際に再発原因を詳しく検証して、
自分なりに考え抜いたり、いろんな手術動画を見てヒントを探したりして、
「もっとこうした方がよくなるんじゃないか?」という仮説を立てて、
次からの手術にフィードバック。
こういった手術操作における、実用的なTIPSは、どんな本や論文にも書いてありません。
このフィールドでは、院内で自分がトップなので、教えを乞う相手もいません。
だからこんな感じで、自ら考え抜きつつ洗練させていくしかありません。
・・・と、いうことで。
骨盤臓器脱手術2600例超にわたって、折に触れてこの作業を繰り返してきてます。
現役で手術を続ける間は、この作業から卒業することはないのでしょう。
赤木一成 骨盤臓器脱外科医師