骨盤臓器脱手術が専門です④:テキトーなのにご婦人に人気の医者

 

おはようございます。

辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科医師の赤木一成です。

 

 

かつて、私のオーベンで、ご婦人方(もちろん患者さんですよ)に絶大な人気のドクターがいました。

 

オーベンって、医者の世界では「上司」という意味です。

 

別にイケメンというわけではありません。

でもそのオーベンと関わっているうちに、ご婦人たちはファンになっていくんです。

 

20年以上むかしの回診風景:その①

 

↑わたくし、そのオーベンと一緒に、術後患者さんの回診をしています。

 

私の担当の、ご婦人Aさん。

「まだ痛いんです。昨日と比べると少しは楽になってきたんですけど、あとは・・・」

 

私「そうですか、傷のところは問題ないようです。痛み止めの注射も使えるようにしておきます。それから・・・」

 

オーベンの担当の、ご婦人Xさん。

「先生~まだ痛いです・・・」

 

オーベン「うんうん分かるよー。まだ痛いよねー。でも大丈夫(笑)」

(もちろん、きちんとお薬出したりはしてるんですよ)

 

テキトーだなぁ・・・こんなんでいいのか?

 

20年以上むかしの回診風景:その②

 

私の担当の、ご婦人Bさん。

「手術したところはいいんだけど、腰が痛くなってきてねえ。それから・・・」

 

私「そうですか。手術した場所は順調で問題ありません。腰の方は整形外科にコンサルトしてみましょうか?」

 

オーベンの担当の、ご婦人Yさん。

「手術したところはいいんだけど、こんどは腰が痛くなってきたんです・・・」

 

オーベン「んーなるほど。それは困ったねえー ちょっとさすってみようかー(笑)」

(もちろん、きちんとお薬出したりしてます)

 

やっぱりテキトーだ・・・

 

ご婦人たちは、オーベンのファンになっていく・・・

 

でも退院する頃には、オーベンが担当していたXさんもYさんも、オーベンのファンになっているんです。

 

そして、私が担当したAさんやBさんは、私のファンにはなってくれませんでした。

 

「なんでだろう? 私とオーベン、どこが違うんだろう?」

 

なんでだろう?と思って観察してたら、見えてきましたよ・・・

 

理由を見つけようと思って、しばらくオーベンを観察してたんです。

 

そしたら、自分の至らない点が、少しずつ分かってきました。

 

それはなにか?

 

当時の私が分かってなかったこと。

私は「解決」することだけを考えていた。

 

私は「解決」することだけを考えていたんです。

 

「解決すればいい」というスタンスだったから・・・

患者さんがいろいろ訴えている最中なのに、

話をろくに最後まで聞かず、

話の要点を把握したら、対処法の説明を始めてしまう。

 

これじゃ患者さんは、不満ですよね。

「話を聞いてくれなかった」と感じるでしょう。

 

でも患者さんは、「傾聴」や「共感」を求めてる。

 

でも患者さんは、「傾聴」や「共感」も求めていたんです。

 

これって看護の世界では、当たり前の事なんだけど、医者はここが弱いんですね。

 

オーベンは、この「傾聴」と「共感」が上手だったんです。

 

当時の私から見れば、オーベンの対応は不合格に思われました。

でもご婦人たちから見たら、オーベンの対応は素敵だったんですよね。

しっかり「傾聴」と「共感」をやってたんですから。

 

これに気づいてから、ちょっとは成長できたような気がします。

できるだけご婦人の話を聞いて、共感の姿勢を示す。

 

なるべくそうするように、心がけています。

 

いまだにオーベンの域には、ぜんぜん及ばないんですけどね。

 

赤木一成 辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科