直腸瘤を診断するのに必須の検査は、排便造影検査と大腸内視鏡検査。
さらに状況に応じて、肛門内圧検査やMRIを行うことがある。
・排便造影検査(デフェコグラフィー)
この検査を行うことで、さまざまな排便障害の原因が明らかとなる。
直腸瘤の重症度を判定することもできる。
さらに直腸重積や奇異性排便時収縮など、直腸瘤以外の疾患も明らかとなる。
・大腸内視鏡検査
「便が出にくい」とか「残便感」といった直腸瘤の症状は、直腸がんの症状と似ている。
だから必ず大腸内視鏡検査を行う必要がある。
・直腸肛門内圧検査
肛門括約筋の機能をチェックするために行われることがある。
・MRI
合併する婦人科疾患の有無を調べるために行うことがある。
直腸瘤の検査:解説
直腸瘤の診断をつける上で行われることがある検査は、排便造影検査(デフェコグラフィー)、大腸内視鏡検査、直腸肛門内圧検査、MRIの四つです。
特に直腸瘤の治療を行う上で必須の検査は、排便造影検査と大腸内視鏡検査です。
排便造影検査
排便造影検査は、デフェコグラフィーと呼ばれます。
直腸瘤の診断には必須の検査ですが、この検査を行っている病院は全国的にもごく一部の大腸肛門科専門病院に限られます。
(各都道府県に一か所あるかないかだと思います)
この検査は、肛門からペースト状のバリウムを少量入れて、排便するときの状況を調べます。
バリウムを疑似の便に見立てて、それを排泄するときの状況を撮影して、排便障害の原因を調べるわけです。
この検査は非常に多くの情報が得られるため、直腸瘤の診断には欠かせません。
この検査は直腸瘤の大きさを正確に判断することができ、さらに直腸粘膜脱・直腸重積など、排便障害をきたす疾患のほとんどが診断がつきます。
特に先進的な大腸肛門科専門病院であれば、ダイナミックデフェコグラフィーといって、排便するときの状況を動画で直接撮影して評価する方法が行われています。
大腸内視鏡検査
大腸内視鏡検査は直腸瘤の診断に直接関係あるわけではありませんが、大腸がんや直腸がんがないことを確認する目的で、必ず行っておく必要があります。
便が出にくいとか残便感といった排便障害の症状は、直腸がんの症状と似ていることが多いので、きちんと大腸や直腸を調べておく必要があるのです。
直腸肛門内圧検査
これも大腸内視鏡検査と同様、直腸瘤の診断と直接関係あるわけではありません。
この直腸肛門内圧検査は、肛門括約筋の機能をチェックする目的で行われます。
便失禁や残便感といった直腸肛門の機能異常を訴える方の場合、肛門括約筋機能にも異常をきたしていることがあるためです。
さらにこの検査は、奇異性排便時収縮という病気と区別をつけるという目的もあります。
奇異性排便時収縮の場合、肛門内圧が異常に上昇していることがあるため、直腸瘤との鑑別をおこなう上での目安が得られることがあるのです。
MRI
この検査は、直腸瘤などの骨盤臓器脱にしばしば合併する婦人科疾患(子宮筋腫・子宮がんなど)の診断に大きな威力を発揮します。
作成:赤木一成(辻仲病院柏の葉 医師)