直腸瘤の手術で、夫婦生活は大丈夫? 十分配慮してますが、時に悩むことがあります。

  • 2020年9月21日
  • 2020年10月12日
  • 直腸瘤

 

わたし、直腸瘤で悩んでるんです。

保存的治療で改善しないので、手術を考えています。

手術を受けたら、夫婦生活に支障が起こりますか?

こんな疑問に答えます。

 

 

おはようございます。

辻仲病院柏の葉 骨盤臓器脱外科の赤木一成です。

 

今回は、医学専門誌「手術」に掲載された私の原稿「直腸瘤の手術」から、その内容をわかりやすく解説してみます。

 

直腸瘤の手術には「経腟手術」と「経肛門手術」があります。

直腸瘤の手術は大きくふたつ(経腟手術経肛門手術)に分けられます。

私の使い分け基準は、↑上記の通りです。

 

「排便障害」が主訴の直腸瘤では、経肛門手術を選択しています。

まず、「排便障害」が主訴の直腸瘤についてお話しします。

※主訴(しゅそ)とは、本人がもっともつらいと感じている症状のことです。

 

「排便障害」が主訴の直腸瘤では、経腟手術経肛門手術どちらが有利か、まだ明らかとなっていません(比較論文が少ない)

 

このような場合、私は経肛門手術を行うようにしています。

理由はいろいろあります。

  1. 短時間かつ低侵襲(低ダメージ)でできること。
  2. 性交障害を起こすリスクがまず無いこと。
  3. 高頻度で合併する、直腸肛門疾患(痔核や粘膜脱など)にも容易に対処できること。
  4. 効果が不十分の場合、追加手術(追加縫合)を行うのが容易であること。
  5. 「排便障害」が主訴の人に、経腟手術を提案しても、なかなか納得してもらえないこと。

(「便が出にくいから手術を受けるのに、なんで膣壁を切る必要があるの?」と皆さん思ってしまうのですよね)

 

「膣側の脱出」が主訴で、性生活の無い人であれば、経腟手術を選択しています。

つぎに「膣側の脱出」が主訴の場合について。

 

「膣側の脱出」を修復するには、経腟手術が優れるということがわかっています(参考

 

だからこのような場合には、経腟手術を選択するのが合理的です。

性生活の無い人であれば、迷わず経腟手術をおすすめしています。

 

悩ましいのは、「膣側の脱出」が主訴で、性生活がある人の場合です。

 

ただし経腟手術は、↑膣壁に傷ができるので、性交障害(違和感や痛み)が起こる可能性があるんです。

だから、「膣側の脱出」が主訴で、性生活がある人の場合には、治療方針に悩むことになります。

(実際にはこのようなケースはごく一部なのですが)

 

このような場合、四つの方針を提案して、本人と相談して決めるようにしています。

  1. 性交障害を生じるリスクを承知で、経腟手術を行う。
  2. 「膣側の脱出」を治す力が弱いのを承知で、経肛門手術を行う。
  3. 体内に一生メッシュを埋め込むのを承知で、腹腔鏡手術を行う。
  4. 当分のあいだ保存的治療を続けて、年を取って性生活が無くなってから、経腟手術を行う。

 

いずれも一長一短です。

だから私が決めるんじゃなくて、本人にすべて説明して、本人が納得したうえで決めてもらうようにしています。

 

赤木一成 辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科