わたし、直腸瘤で悩んでるんです。
便秘薬で治療を続けてきたけど、全然よくならなくって、手術を考えてるんです。 手術には二種類あるって聞いたんだけど、私にはどっちがいいのか教えてくださいな。 |
こんな疑問に答えます。
今回は、医学専門誌「手術」に掲載された私の原稿「直腸瘤の手術」から、その内容をわかりやすく解説してみます。
直腸瘤の手術は大きくふたつ(経腟手術と経肛門手術)に分けられますが、そもそもこの両方の術式を手がけている病院は、全国的にもほとんど無い(と思う)のが現状です。
婦人科医は経腟手術、大腸肛門外科医は経肛門手術といった具合に、自分が慣れたやり方に徹しているわけですね。
直腸瘤の手術には、経腟手術と経肛門手術があり、どちらも長所短所があります。
まずは結論から。
- 膣壁の膨隆(膣側からでっぱってくる)が主訴であれば、経腟手術。
- 排便障害(便が出にくい・残便感)が主訴であれば、経肛門手術。
私は原則として、こんな方針でやっています。
(主訴とは、患者さんが一番つらいと思っている症状の事です)
もちろんこれはあくまでも原則なので、一人一人の状況に応じて、本人と話し合いながら、方針を決めていくことになります。
直腸瘤の経腟手術は、膣側の膨隆を治すのが得意ですが、性交障害の可能性があります。
経腟手術は、膣壁を切開して縫合する手術です。
膣側のでっぱりを治すには、膣側から手を付けるのが効率的なわけですね。
この方法は、膣壁を切って縫うわけですから、傷跡ができます。
性生活に支障(違和感・痛み)が起こる可能性があるわけですから、若い年齢の人には行いません。
「膣壁の膨隆が主訴で、ある程度年齢の高い方」にぴったりの方法ということになります。
直腸瘤の経肛門手術は、性交障害は起こりませんが、膣壁の膨隆を治す効果は弱いです。
経肛門手術は、肛門側から直腸壁を縫い縮める手術です。
膣壁に手を付けないので、性交障害が起こりません。
ただし膣壁の膨隆を治す効果は、経腟手術より弱くなります。
私の場合、排便障害が主訴の方では、年齢に関係なく経肛門手術を選択しています。
また、膣壁の膨隆が主訴であっても、性生活を考慮すべき若い人であれば、この経肛門手術を選択することがあります。