骨盤臓器脱手術後にときどき行う尿失禁手術:手術のポイントはどこ?

 

おはようございます。

辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科医師の赤木一成です。

 

今日は、骨盤臓器脱手術後にときどき起こる、尿失禁のお話です。

 

膀胱瘤の手術後に、尿失禁が起こる人がいるのはなぜ?

 

↑これが、正常の膀胱と尿道です。

膀胱に尿がためられて、この尿が尿道を通って出てきます。

 

 

膀胱瘤で膀胱が下がると(青矢印)、尿道が圧迫(赤矢印)されます。

そのために、尿が出にくく(漏れにくく)なっています。

 

 

膀胱瘤を手術したら、膀胱が元の位置に戻って、尿道の圧迫がとれます。

尿道の締まりが正常の人であれば、問題ありませんが・・・

 

 

もともと尿道の締まりがゆるい人では、尿道の圧迫が取れると、尿が漏れることがあります。

歩く・立ち上がる・咳する・階段、こんな動作で腹圧がかかると、尿が漏れるんです。

これを「腹圧性尿失禁」といいます。

 

尿失禁が起こったらどうするの?:骨盤底筋体操

 

 

このような場合、まずは骨盤底筋体操で対処します。

 

これで多くの人は、尿漏れが改善してくるんですけど、それでも尿漏れがよくならない人もいるんです。

 

その場合には、次の手を打ちます。

 

体操でよくならない人だけ、尿失禁の手術を行うことがあります。

 

 

このようなケースに行われる手術がありまして、これを「TOT手術」と言います。

 

ゆるくて不安定な尿道を、テープで支えることで、尿失禁を改善させます。

 

テープの「張り加減」がポイントです。

画像引用:Boston Scientific

 

このTOT手術では、↑このようなメッシュのテープを、体内に留置します。

 

この手術、テープの「張り加減」がポイントです。

ゆるすぎると尿失禁がよくならないし、きつすぎると尿が出なくなります。

 

だから、「ちょうどよい張り加減」に落ち着ける必要があります。

 

多くの人は「ちょうどよい」範囲に落ち着けることができます。

 

↑多くの人では、「ちょうど良い張り加減」に落ち着けることができます。

 

「ちょうどよい張り加減」であれば、尿が漏れず、尿がスムーズに出ます。

 

この「ちょうどよい」範囲が狭い人では、対処が難しくなります。

 

でもときどき、↑この「ちょうどよい」範囲がせまい人がいるんです。

こういう人って、膀胱の収縮力が弱かったりするんですね。

 

この場合、いつも通りの張り加減だと、尿が出にくくなります。

かといって、張り加減が弱すぎると、尿漏れが治りません。

 

だからこんな場合には、対処が難しくなります。

 

「ちょうどよい」範囲が狭い人では、どうしているか。

 

こんな場合にはどうするか?

 

尿が出にくいと、生活に大きな支障をきたします。

いっぽう、少々の尿漏れは、生活に支障は生じません。

 

だからこんな場合には、「尿がときどき少し漏れる」くらいを目標にするんです。

 

「ほどほど」が大事なんです。

 

TOT手術前の尿漏れレベルが10だったとしたら、なにがなんでも「尿漏れゼロ」を目指すのはよくないということです。

 

10だった尿漏れを、1~2くらいのレベルにとどめて、「尿が出にくい状態」だけは回避する。

これが「適切な張り加減」になります。

 

そもそも健康な女性でも、60代70代になると、少々の尿漏れがあるのが普通です。

だから完璧に尿漏れゼロを目指さずに、ほどほどのところを目指すのが賢明と言うことですね。

 

赤木一成 辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科