おはようございます。
辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科医師の赤木一成です。
今回は、「手術の下準備」のお話をさせていただきます。
よろしければ、お付き合いください。
骨盤臓器脱手術の「ゴール」と「王道」
骨盤臓器脱手術って、ゴールは決まっています。
「正常の膣の形状に戻すこと」
言うまでも無いことですね。
そのゴールに、安全にたどり着かなければいけません。
そして、安全にたどり着くためのルートがあります。
ルートには、「王道」があります。
確実性、安全性、手間、コスト、これらの総合点がもっとも高いルートが、「王道」です。
でも人体相手の作業ですから、かならずしもすべてのケースで、「王道」を行けるわけではありません。
「王道」を行けない場合には、「わき道」を通って、ゴールにたどり着く必要があります。
「王道」を行けない場合の対処法
ときどき、この「王道」を行けないケースがあります。
もっとも多い理由は・・・↑「癒着」です。
癒着が強くて剥離(はがす操作)が難しいケースって、一定頻度で存在します。
癒着の原因は、だいたいこの二つです。
- 過去の手術(子宮を取ってるとか、骨盤臓器脱術後の再発とか)
- ペッサリーの長期使用
そして、このようなケースへの対応策は、こうなります。
- 剥離する層を変えてやりなおす
- 危険な剥離場所を回避して、同じ結果を達成できるルートに切り替える
このような時、なにがなんでも予定通りの剥離を完遂させようとすると・・・
だいたい、ロクなことになりません。
多量に出血するとか。
臓器損傷(膀胱損傷、直腸損傷)するとか。
でもたまーに、「王道」も「わき道」もほとんどふさがれてて、肚くくって進むしかないケースもあるんですけどね・・・
手術の「下準備」って大事なんです。
どの領域の手術であっても、「独り立ち」のレベルに達するには、以下のステップを踏む必要があります。
①↑手術の「フローチャート」をあらかじめ作成しておき、「こういう展開になったらこうする」という手順を確立しておく。
②手術前にイメトレを行って、いかなる展開になっても、即座に対応できるようにしておく。
「手術は準備段階で半分終わってる」というのは、こういうことを言ってるわけですね。
逆に言えば、この作業を怠ると・・・
「王道」から外れた展開になった時に、
いちいち考え込んで時間を浪費したり
その場で即興で思いついた(最善手ではない)方法を始めてみたり
最悪どうしたらいいか分からず途方に暮れることになったり。
これではいつまでたっても、「結果が出せるかどうか、やってみないと分からない」という、運任せ状態ということになります・・・
「手術が速い」とは
手が変態レベルに速く動く人w
「手術が速い」って、べつに↑「手が速く動く」ということではありません。
手の動きはゆっくりでも・・・
いちいち迷ったり考えたりしないで、動きに無駄が無くて、操作が一発で決まる。
そうすれば結果的に、「速い手術」となります。
「ゆっくり確実にやってるように見えるけど、終わってみたら速かった」
そんな手術を、理想としています。
赤木一成
辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科