趣味の千時間プロの一万時間。今週の骨盤臓器脱手術は6例でした。

↑当院の個室です・・・

 

あけましておめでとうございます。

辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科の赤木一成です。

 

昨年は毎日更新して、書きたいことを書きつくしたので、今年はのんびりやっていくつもりです。

よろしければ、お付き合いください。

 

今日は週末なので、「一週間の骨盤臓器脱手術記録」を書きます。

これはリアルタイムの記録ではなく、ちょっと前の「一週間のできごと」の記録です。

 

子宮脱や膀胱瘤の手術を6例行いました。

子宮脱+膀胱瘤の手術を6例行いました。

 

とくに大きなトラブルはありませんでした。

 

ただ一人だけ、残尿が多くて、対処を要した人がいました。

 

骨盤臓器脱の術後は、4日間おしっこの管(バルーンカテーテル)留置して、膀胱を休めます。

術後4日目にこの管を抜いて、排尿が問題なければ退院できます。

 

ほとんどの人は予定通りに退院できるんですけど、たまにこの排尿が上手くいかない人がいます。

 

もともと「膀胱収縮力が弱い人」っているんですけど、こんな人が骨盤臓器脱手術で膀胱に刺激をうけると、排尿が上手くいかないことがあるんです。

 

このような時、わたしは「膀胱がびっくりしてる」と説明してます。

変な表現だけど、患者さんはこの表現が、いちばん納得いくようです。

だからこの表現を多用しています。

 

この方は、おしっこの管を抜いたあと、「尿が出にくい・下腹部が張る」という訴えがありました。

検査してみたら、残尿が多く残っていました。

 

少々残尿が多い程度なら、「残尿を減らす内服薬」を処方して、予定通り退院可能です。

 

残尿がかなり多い場合には、おしっこの管を再留置して、膀胱を休める期間を延長することもあります。

ただし再留置になる人は、年に一人いるかいないかと言う感じです。

 

この方はめずらしく、おしっこの管の留置期間を2日ほど延長して、残尿を減らす薬も処方して対処しました。

その後、排尿状態は回復したので、退院されました。

 

まあ「大きなトラブル」というほどではないですね。

遠方にお住まいで、もともと長目に入院する予定の方だったので、予定通りの退院でした。

 

趣味の1000時間、プロの10000時間

画像引用:講談社BOOK倶楽部

 

↑この本で有名になった、「10000時間の法則」という言葉があります。

 

第一線のプロとして食っていけるレベルになるには、10000時間の訓練が必要という意味です。

 

さらに、「1000時間の法則」という言葉もあります。

これは、趣味で上級者レベルになるのに要する時間です。

この1000時間って、英語学習の領域でもよく使われます(教材にもなってます)

 

 

著者(マルコム・グラッドウェル氏)

 

この二つを合わせると、「趣味の1000時間、プロの10000時間」ということになります。

「趣味で上級者になるには1000時間の鍛錬が必要」で、

「第一線のプロとして食っていけるようになるには10000時間が必要」ということです。

趣味と仕事では、修業期間に10倍の差があるということですね。

 

10000時間も投入するんですから、第一線のプロになれるフィールドは、誰だって一つだけです。

だから厳選しなくてはいけません。

 

修行に適した若い時期(20~30代)を、どの分野に10000時間捧げるか。

これは若い人における、人生最大の選択ですよね。

40代50代になって一念発起して、新たな分野で10000時間修行しても、そこからプロデビューするのはまず無理でしょうからね。

 

医者の場合は、これよりさらに時間がかかります。

医学部受験にも、膨大な時間が費やされるからです。

 

医学部に受かるには、5000時間の勉強が必要とされます(参考

たしかに自分の過去を思い起こしてみると、「そんなもんかなー」という感じです。

 

5000時間の勉強して、現役か一浪くらいで医学部に入る。

大学で6年間必要なので、医師免許を取得できるのは、順調に行っても25歳ごろです。

 

そこから一人前の医者になるために、さらに10000時間の修行を行う。

診療科にもよりますが、たとえば外科系では「一人前になるのに10年必要」とされるので、医者の修行で10000時間に到達するには10年かかるのでしょう。

 

だから医者の場合には、10年10000時間の修行を積んで一人前になるのは、早くても35歳頃ということです。

大学教授を目指して、大学院で4年間基礎研究とか、米国で研究留学とか、そんなことやってると40歳くらいになることもザラです。

 

一人前の医者になるのって、ほんとに長い道のりだということです。

わたしもかつては「転んでは起き上がり」の不器用キャリアだったんですが、辻仲病院に入職して18年間にわたって、骨盤臓器脱&直腸肛門疾患の手術修行を積むことができました。

 

わたしの場合、このフィールドで10年10000時間に到達できたようです。

ありがたいことですね。

 

とりとめのないことを書いてしまいましたが、新年ということでご容赦くださいませ・・・

おわり。

 

赤木一成 辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科