わたし、子宮脱の手術を受けたいんです。
でも私たち、夫婦生活があるんです。 手術を受けたら性行為に支障が起こりますか? |
こんな疑問に答えます。
おはようございます。
辻仲病院柏の葉 骨盤臓器脱外科医師の赤木一成です。
毎日のように骨盤臓器脱手術を行っています。
40代50代の若い人であれば、骨盤臓器脱の手術後に性生活がどうなるか、気になることと思います。
今回は、この「術後の性生活」への対処法について、解説いたします。
どの骨盤臓器脱手術でも基本的に性行為は可能です。
ただし膣側からの手術では、性行為時に違和感や痛みを生じる可能性があります。
子宮脱や膀胱瘤の手術には、経腟手術(膣側からの手術)と、経腹手術(おなか側からの手術)があります。
このうち↑経腟手術は、膣壁を5㎝くらい切る必要があるので、ここに傷あとができます。
だから性行為時に、違和感や痛みを生じる可能性があります。
「性生活の質」で評価するなら、性生活はできるけど違和感が起こりうるので、〇△×のなかで、「△」というところでしょうか。
(参考)昔行われていた手術では、性交不能になるケースがあった。
ちなみに、過去に行われていた経腟手術は、「子宮を取って、膣壁を強く縫い縮める方法」が主流でした。
子宮を取ると、膣が浅くなります。
また膣壁を強く縫い縮めると、膣が狭くなります(狭窄)
だからこの方法では、性行為が不可能になるケースがあったんです。
「性生活の質」で評価するなら、〇△×のなかで、「△~×」というところでしょうか。
現在当院では、この「子宮を取って、膣壁を強く縫い縮める方法」はやっていません。
おなか側からの骨盤臓器脱手術なら、性行為障害を生じる可能性は低いですが・・・
この↑経腹手術(腹腔鏡下仙骨膣固定術)であれば、膣壁に手を付けません。
だから性交時に違和感や痛みを生じる可能性は、経腟手術より低くなります。
「性生活の質」で評価するなら、〇△×のなかで「〇」になりやすいんです。
ただしこの経腹手術は・・・
手術時間が長い
(原則として)子宮を取る
おなかを切って内臓を切ったり縫ったりする
だから手術の侵襲(ダメージ)が大きくなる
おなかの中に一生メッシュを留置する必要がある
などの短所があります。
だから経腹手術は、「性生活を重視し、そのために上記の短所を受け入れられる若い人」に向く手術です。
性生活を重視しない人には、経腟手術をおすすめしています。
手術時間が短く、子宮を温存でき、おなかを切る必要がなく、だから手術の侵襲が小さく、基本的にメッシュも不要で、再発もほとんど無いからです。
赤木一成 辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科