「独立した術者」になるまでに超えるべき二つのハードル。今週は7例

柏の葉はときどき鳥だらけヒッチコック状態になります・・・

 

おはようございます。

辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科医師の赤木一成です。

 

週末なので、「一週間の骨盤臓器脱手術記録」を書きます。

患者さんを特定できないよう配慮して、数週間前の日常を描写しています。

 

手術を7例行いました。

この週は、子宮脱+膀胱瘤の手術を7例行いました。

みなさん問題なく経過して、予定通りの退院です。

 

今年も残すところあと1か月となったので、このまま2022年を駆け抜けていく所存です(笑)

 

「独立した術者」って何?

 

「独立した術者」って、聞きなれない言葉かもしれませんね。

 

「自分と若手で手術する」とか、「自分一人で手術する」みたいに・・・

「つねに自ら指揮をとって責任を取る立場」の術者のことを言います。

 

だから、たとえ15年選手であっても、たびたび上級者の助力を仰いでいるような術者は、「独立した術者」ではありません。

 

 

・・・では、どれだけの修行を積めば、「独立した術者」になれるのか?

いろんな意見があります。

  • 10年やり続けた人
  • 10000時間の修行を積んだ人
  • 手術を〇件以上手がけた人

 

どれが正解かは、ここでは置いておきましょう。

 

今回、私が言いたいことは・・・

「『独立した術者』に到達するには、二つのハードルを越えなければいけない」ということなんです。

 

①技術的なハードル

まず、「技術的なハードル」です。

 

 

手術って、若手の頃は、標準的な症例が割り当てられます。

でも「独立した術者」になったら、どんな困難症例でも避けることはできません。

術中に想定外の展開になった場合には、二の手三の手を打てなければいけません。

もし術後にトラブルが起こった場合には、適切なリカバリーショットを打つ必要もあります。

さらに、手術時間とか再発率とかに関しても、全国水準に恥じない成績を要求されます。

 

周囲を納得させるレベルで、結果を出し続けなければいけないということですね。

 

 

一方、どれだけキャリアが長いドクターでも・・・

難しそうなケースはすぐ丸投げとか、

手術時間が異様に長いとか、

出血がやたらと多いとか、

手術を完遂できず途中で中止とか、

合併症が明らかに多いとか、

しょっちゅう再発するとか・・・

 

それじゃ話になりません。

いずれスタッフや経営陣からの信頼を失って、居場所を無くしていきます。

 

②心理的なハードル

 

技術的ハードルをクリアできても、それで十分ではありません。

もうひとつ、「心理的なハードル」を越える必要があるんです。

 

上司と手術してる間は、怒られたりはするけれど、それほど強烈なプレッシャーはありません。

 

上司と手術するときには・・・

上司が心理的プレッシャーを引き受けてくれて、

手術しやすいようリードしてくれて、

判断に迷う局面で助言してくれて、

もしトラブったらリカバリーしてくれて、

なんかあった時には責任も分担してくれる。

 

若手の頃はわかりづらいけど、上司って、無償でこれだけのことをやってくれてるんですよね。

 

そして当然だけど・・・

自分が「独立した術者」になったら、これら全てを引き受けることになります。

もう、助けてくれる格上の人はいません。

 

キャラにもよりますが・・・ここで耐えられず、心折れるパターンがあるんですよね。

 

 

だからワタクシ、各診療科のトップで、年間100件200件と手術をやり続けてる先生方には、敬意を払っています。

 

これら二つのハードルを乗り越えて、結果を出し続けて生き残ってきた、歴戦の勇者ということですからね。

 

世代交代のとき、ナンバーツーの真価が問われる。

 

どれだけ偉大なトップでも、いずれ第一線を退くときが訪れます。

そのとき、その診療科ナンバーツーだった医師が、真価を問われることになります。

 

今まで通り、結果を出し続ければ、いずれ「押しも押されもせぬトップ」として認められますが・・・

 

結果を出せずに、手術件数が激減したり、経営陣から引導を渡されたり、よそから新たにトップが来てナンバーツーに戻されたり・・・

そんなケース、実際に見てきました。

 

 

なかなか、道のりは長いということです。

 

 

赤木一成

辻仲病院柏の葉・骨盤臓器脱外科